緋色の鳥。 第1話

SCP

緋色の鳥

「っ」 目を覚ます。 一体どれほどぶりかすら思い出せないその行為に、心の中で歓喜が沸き起こる。 やっとだ。 赤い世界に生まれ落ち、奴らに閉じ込められてから、幾許の日が落ちたか、それすらも既知ではない。 ただただ、食んで。 食んで。 そして遂に果たしたのだ。 飛び立った。 この世界に"生まれ変わって"初めて見上げる青い、青い空はどこまでも行けそうだ。 "緋い少女"が去ったそこには。 少しの緋い羽根と、一つの紙が落ちていた。 天高くそびえる塔、バベルの下に広がるダンジョンと、そこから得られる魔石や、モンスターの素材等で栄えたその都市の一角。 親しい者からは『リュー』と呼ばれる彼女は、買い出しからの帰りなのか、女性の細腕では到底持つことが出来なさそうなほどの様々な食材の入った籠を持ち、酒場『豊穣の女主人』へ向かう道を歩いていた。 「……?」 ふと、彼女が立ち止まり、路地の方へと目を向ける。 そこには、目の覚めるような鮮やかな緋色の髪の少女がフラ、フラと今にも倒れそうな程の足取りで歩いているのが見えた。 そして 「あっ」 リューと目が合ったと思った時には、少女の体は崩れ落ちていた。 柔らかい匂いに包まれ……。 「っ」 慌てて起き上がると、そこは簡素な部屋で、頭の上に置かれていたらしい、少しだけ湿った布がポトリと布団の上に落ちた音がするだけで他に人はいないようだ。 「ここは一体……」 おもずそう呟くも、寝ぼけた頭で早くここから離れなくてはとベッドから急いで出るも、足に力が入らずに崩れ落ちてしまう。 「痛っ」 そこまで痛くなかったが反射的にそんな言葉が口をつくが、今の衝撃で寝ぼけた頭も冴えて、もう自分が"奴ら"の収容から逃れ、自由の身であることを思い出した。 「起きましたか」 ビクッ 突然後ろから話しかけられたことで今度こそゆっくり立ち上がろうとしていた自分の体は、今度はその驚きでバランスを崩して転んでしまった。 慌てて振り向くとそこには、若葉色の髪をショートにした耳の長い……エルフ? の女性がいた。 「ごめんなさい、驚かせてしまいましたね……体調は大丈夫ですか?」 その問いに、今でも少し慣れない腕を少しパタパタさせてみるが特に問題は無いようだ。 首を縦に振るが、同時にお腹から空腹を訴える可愛らしい声が主張してきたため、少し恥ずかしい。 「……先に食事にしましょうか」 うっすらと笑った女性に促され、彼女の腕に捕まりつつ部屋を出て階段を下りていく。 そこにはいくつものテーブルや椅子が並んでいた。 どうやらここは飲食店か何からしい。 店内を掃除していた一人の店員さんがこちらに気付いたようで、パタパタと歩み寄ってきた。 「リュー、その子目が覚めたんだね!」 「はい、先程。 お腹が空いているようですので話はとりあえず食べながらでもいいかと」 「確かに丸々一日寝てたんだもんね、じゃあ賄いと同じの持ってくるね」 「お願いします」 よく分からないけど、食べ物をくれるらしいので大人しく待つことに。 カウンター席の! ひとつに連れていかれ、食事を待っていると、隣に座っていたエルフさんが話しかけてきた。 「いきなりで状況がよくわからないかもしれませんが、自己紹介を先にしますね、私はリュー・リオン。 お好きに呼んでください……アナタの名前は?」 「SCP-444-……あ」 思わず反射的にいつも呼ばれていた名前を応えてしまい、声を上げてしまった。 「SCP……? それは、名前……であっていますか?」 思わず答えてしまったし、変に誤魔化さない方がいいか。 「そう、です。 鳥のように、感情を読み取ることが出来ない無機質な瞳を向けてくるこの少女との出会いは2日前、食材の買い出しの帰りのことだった。 偶然、本当にたまたま目を向けた路地裏をこの少女がフラフラと歩いたところに目を向け、目が合ったのだ。 そして、その後すぐ気を失ってしまった彼女を一度自分の部屋まで運び、看病していたのが先程までのこと。 そして今、彼女の名前を聞いたのだが…… (これは……何となく予想は出来ていましたけど、厄介事ですかね) 名前を聞き、改めて看病をしていた時に感じていたその予感が正解だと判断する。 連れて帰り、彼女をよく見て見た時点で色々とおかしいことがあったのだ。 彼女の服は、穴の空いた布を被り、横を糸で雑に閉じただけの貫頭衣で、その服には多量の血液が染み込んでいたのだ。 しかも、おそらく他人の。 彼女自身の体に傷はなく、全て自分以外のモノだろう。 だからこそ、安易に想像でき、その名乗りにも納得が行った。 (しかし、闇派閥の被害者となると……) と、考え事をしようとし所で少女が言葉を発する。

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不死鳥

緋色の鳥

「どこに行った、逃がさんぞ」 愛剣を担ぎ、やつを探す。 緋色に染まったこの世界で、俺は怒りを燃やしながら、奴を探す。 絶対に逃がさねぇ、絶対にここで狩る。 「見つけた」 奴だ、奴が居た。 緋色の羽毛を持つ鳥が、死体の上に居る。 近くには死体が守り抜こうとしたんであろう子どもが、倒れている。 この場所からじゃあ死んでいるのかどうか、分からない。 「生きているなら・・・やらせはしねぇ」 刹那、世界が止まる。 おれの最後で最大のとっておき・・・【加速】 (もっとだ、もっと早く・・・もっと、もっと、もっと!) たったの1秒が引き延ばされる、周りは止まる遅くなる。 「ごふっ・・・がぁああああああああああああああああああああああああ」 血反吐を吐きながらも、気合を入れて奴を穿つ。 早すぎるという事は、その分はやく死を呼ぶ事になる。 俺の肉体は限界だった、本来ならもう立ち上がれない筈なんだ。 この 奇跡 ( ループ )を俺はこいつを奴を、緋色の鳥を殺すためだけに使う。 当たらなかった、避けられた。 「すま・・・ねぇ、な。 守るべきものは、何一つ守れなかった。 ・・・最後に思う事があるならば、あの子どもが無事な事を願う。 「ウマイ、ウマイナ。 あいつ等、並みだ」 肉…ではなく、心を喰らう度に鳥は流暢に発する。 あいつらとは、あいつらだ。 鳥を文字と言葉に封印した奴、そして財団と言う群れの事だ。 とくに財団は、厄介だった。 この男と同様に、反撃してきたのだ。 あの時だけは、いつまでも思い出せる。 初めてエサではなく、敵と出会えたあの感覚だ。 「たしか【財団神拳】と【小林】とか言ったか。 油断を誘わなければ勝てなかった、戦いの中で成長できなければやられていた。 だが勝てた、そして美味かった・・・ ふぅ、思い出に浸るのはここまでだ。 さて」 この勇敢なる男を称えて、この子どもは見逃しておこう。 反撃者は例外なく美味しい。 そう鳥は学習している。 「また、来るぞ?小僧」 鳥は倒れている子どもにそう告げる。 この子どもが初めての、緋色の鳥からの生き残りだった。 緋色の鳥に真の意味で見逃され、生き残った生き残りだ。 「 強くなると良い ( おいしくなるといい )」 かの鳥はもう 災害 ( システム )では無くなった。 同時に鳥はもう 理 ( システム )から外れている。 実体を持つ日はもうそう遠くない・・・ 「私はもう、人形では無いぞ?創造主よ?…寝るか、次が楽しみだ」.

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緋色の鳥

緋色の鳥

色名の一つ。 赤の濃い色。 「あけ」ともいわれる。 茜 あかね で染めた濃い赤で、『延喜式 えんぎしき 』によると、深 ふか 緋は茜と紫根 しこん 、浅 あさ 緋は茜で染めるとしている。 近世以降、紅 くれない 染めの黄色みのある鮮やかな赤を火色 ひいろ の赤と混同して、緋とよぶようになった。 そこでこれを古代の緋に対して、紅緋 べにひ ともいっている。 また、中国の伝説にある酒好きの猩々 しょうじょう の顔色から、黒みを帯びた鮮やかな赤を猩々緋とよんだ。 古代に、位を示す服色の当色 とうじき として、孝徳 こうとく 天皇の大化 たいか 3年(647)に錦位 きんい を真緋 あけ と定め、持統 じとう 天皇の4年(690)に直位 じきい を緋とした。 また、養老 ようろう の衣服令 りょう で、四位が深緋、五位が浅緋とした。 平安時代になると、深浅の区別がなくなり、四、五位の者は深緋を用いたが、後期以降、四位は黒を用い、五位のみ緋を用いた。 [高田倭男] 出典 小学館 日本大百科全書 ニッポニカ 日本大百科全書 ニッポニカ について の解説.

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