別れ の 言葉 はなし か。 ハリー・ポッターと帝王のホムンクルス

そんな綺麗事は通用しない!彼がゲンナリする「別れの言葉」

別れ の 言葉 はなし か

「この場所も、若とよく一緒に来たよね。 」 眺めの良い丘からは、遥か遠くまで続く緑豊かな大地と、立派な城壁で囲まれた大きな都市が見える。 景色のずっと奥の方で荒ぶる稜線とは対照的で、真っ直ぐに伸びる城壁が美しい。 その内側から賑やかな街の活気が溢れてくるような気がして、ここに立っていると心が沸き立つ。 馬岱はこの場所が好きだった。 「もうじきこの辺の景色も変わってしまうかもしれないよ。 なるべく酷いことにはしないようにって思ってるけど。 」 いずれ戦場となる周辺の哨戒も兼ねて一人馬を走らせてきたのだが、予想以上に昔の思いが込み上げてくることを察した馬岱は、己の気持ちを抑えられるうちにと早々に踵を返した。 頭上よりやや傾いた太陽を手で遮るようにしながら仰ぐと、中途半端な時間になってしまったことに溜め息をついた。 懐かしむことは、どう考えても今の自分のするべきことではないと思っている。 「まあでも... たまにはいいかな。 せっかく来たついでだし、珍しく晴れちゃったし。 ね、もうちょい足延ばしてみる?」 ここでいつも答えを求めていた相手は、もういない。 「もうあの時からさ、何言っても独り言になるんだから。 参るよほんと。 ていうか、それって俺も、歳取っちゃったってことなのかな...。 」 想い出を巡ることを決めると、馬岱は手綱を握りしめた。 愛馬を走らせ暫く行くと、川沿いの桜並木を見つけた。 「いいねー。 」 馬から降りてしばし花見に興じるが、風が吹き抜け沢山の花びらが一斉に目の前を舞った瞬間、馬岱は苦い顔をした。 」 立派に咲き誇る桜の木を、邪魔臭そうに見上げた。 「若ー。 また桜の季節だよ。 早いよねえ、ほんと。 」 馬岱は、地面を疎らに染める花びらにまじっていた形のいい小石を見つけると、足でこつんと蹴った。 「俺、あれから泣いてないよ。 」 一歩二歩進むと、転がった先の小石をまた蹴る。 「最近忙しくてさ。 泣いてる暇なんかないというか... 」 「だいたい、泣きたいことってのがないんだよね。... おっと。 」 適当に蹴った小石は随分と曲がって飛んでいった。 「そうそう、だから... 若のこと考える時間もあんましなくてさ... 」 蹴る度に花びらの上を跳ねるように転がっていく小石を追いかける。 「でも... それくらいがちょうどいい... 」 語尾に合わせて強めに蹴った小石は、ぽちゃんと音を立てて川に落ちた。 「そういえばあそこの桜も咲いてる頃だよね。 」 馬岱は愛馬を撫でてやると、ゆっくりと跨がった。 「あのとき若が誘ってくれてよかった。 お陰でこうして、今も生きていられるから。 」 [newpage] ある時から、若は頻繁に俺のことを誘うようになった。 最初の頃は、飯を食べに行こうという類いの、今までからも時々あるようなことだった。 最近よく誘われるなあと思いながらも、普通に理解のできることだったので特に気にすることはなかった。 だけどそのうち、子馬が産まれたから見に行こうだの、得意でもない碁の相手をしろだのと言ってくるようになった。 絵を描いてくれという、よくわからない注文のようなものもあった。 そういったことでいちいち俺を呼び出すような人ではなかったので、まさか若に限ってこの俺に何か魂胆でもあるのかと、冗談を投げてみたこともあった。 若の答えが、「そんなものあるものか」という冗談を真面目に返してくるお決まりであることは、想像通りすぎて詰まらない。 俺の新しい長袍を仕立てにいこうと、店に連れていかれたこともあった。 「急に何?そんな贈り物みたいなことして。 ちょい待って若、そこも俺でいいわけ?」 さすがに喉まで出かかった。 口にすることはなかったけれど。 それは、若といられること自体は素直に嬉しかったし。 面倒だと思うことなど、一度だってなかった。 ああでも、そのあと調子に乗った若は帽子も新調しろと言ってきて。 これだけは丁重に断ってやった。 若、俺がこの帽子をどれほど大事にしているか、まさか知らないわけじゃないよね。 だいたい、今まで俺にそんなことしたことなかったのに、どうして今この時機に。 ほんの少し引っかかったこの思いは、頭の片隅に残しておくことにした。 それにしても、戦場ではない場所においてこれほどまで若と行動を共にすることなど、あっただろうか。 幼い頃から一緒に育ったようなものだから、もちろんあったには違いないだろうけど、少なくとも俺が "大人になってから" は普段の行動に首を突っ込まれることはなかったように思う。 若なりに気を遣ってくれていたのかもしれないけれど、それよりも、若は元来ひとりでいることを好む人だったということなのかもしれない。 ただ、遠駆けに行くときは必ず俺に声を掛けてくれていた。 これだけは、大人になってからも変わることがなかった。 若は機嫌の良いときばかりではなかったが、大概は清々しい顔で愛馬を駆っていた。 そして、馬と同じくらい、風とも戯れていた。 本当に、本当に風がよく似合う男だった。 戦場にあらずの錦馬超。 このときの馬上での凛とした後ろ姿は、色鮮やかなまま死んでも頭から離れないと思っていた。 色々と記憶を整理することが億劫である今、こういうのはもう忘れてもいいと投げ遣りに思っているのだけれど、俺の最も愛すべきこの姿は、そう簡単に消えてはくれない。 それなのに、これからじわじわと少しずつ色が薄れていくであろうことを思うと、何とも言えない気持ちになる。 どうせいつかは消えてなくなるのなら、いっそのこと今すぐ跡形もなく一瞬で消え去ってくれればいいのに。 自分の記憶であろうが、未練たらしいのは嫌いだ。 とりあえず今は、「じわじわ」という時間の遅さがこの先焼けつくような不快感になるだろうと、予測せずにはいられない。 進行速度が緩慢であることは、俺が生きていくうえで何の助けにもならない。 苦痛であり、怖いことでしかない。 若との遠駆けのことはいつもよく覚えている。 だから怖いくらいに。 とても。 若が俺を頻繁に誘うようになったのがいつ頃からなのか、今も到底思い出す気にはなれない。 それは、別れの秒読みがいつからだったのかを遡って数えることに何の意味があるのか、俺にはまだわからないから。 うーん... 今更なんだけど若、 だからなんで、どうしてもっと前から俺のこと呼んでくれなかったの? もっと一緒にいるべきだった。 あれだよね。 俺は、いつだってここにいたよ。 なのにね。 もう若はここにいなければ、あの頃の俺もここにはいない。 [newpage] 蜀に来てから、馬家という身分ゆえの待遇は若には仇となっていたのかもしれない。 思うように動けず、戦で満足な戦果を挙げられなくなっていた頃でもあり、若が俺を誘って時間を共有しようとすることは、気持ちをなんとか保つための踠きだったのだろうか。 それはなんとなく違うと思いながらも、そんな胸のつかえを取り除くことにさほど努力もせず、ぼんやりと若の姿だけを見ていた。 そして、若の胸元の僅かな鮮血に気がついたとき、それはやはり違っていたということがあっさりと確信に変わった。 ようやく気づいたときにはもう、いろんな事がとっくに手遅れとなっていた。 熱量は相変わらずだったし、戦続きでもなかったので肉体的な疲労ではないと高を括っていたが。 まさか、心労でこんなになっちゃってたとは。 若は、俺と共に過ごすことを望んだ。 ただそれだけ。 踠いているわけでもなく、ただそれだけだったのだ。 侮辱にも値する安っぽい言葉で吐き捨てるならば、死ぬ前に思い出を残したかったってやつ? 一番長く、一番誰よりも傍にいたのに。 俺はなんにも、何ひとつとしてわかっていなかった。 こんな目いらない。 こんな心いらない。 自分自身を掻きむしりたくなった。 [newpage] 「馬岱、桜を見に行くぞ。 」 この日の若も、断る余地は与えないと言わんばかりに、愛馬を曳きながら俺のところにやってきた。 「待ってたよ、若。 そろそろ来るかなあって。 」 若はいつ、遠駆けに行くと言わなくなるのだろう。 俺は栗毛に鞍を据えて跨がると、その腹に軽く脚を当て、若よりも先に門を出た。 道が途切れる所まで駆けると、その先はどこまでもと思えるほど地面が広がっているだけ。 陽の光と陰を頼りに進む。 やがて、すぐ後ろから聞こえてきた蹄の音が横並びになり、抜かしていく。 若は、真っ直ぐに前を向いていた。 幼い頃には憧れであり、戦場に赴くようになってからも自慢でしかなかった若の後ろ姿が、一回り小さくなったように思えた。 姿勢は良いのが常だったが、今は背筋を伸ばしていることが精一杯に見える。 愛してやまないその姿が変化していることを受け入れ、冷静なまま俺はどこまで見届けることができるだろうか。 あれやこれやと言って誘ってくる若を黙って受けとめるようになり、随分と時間が経っていた。 もうすでに気持ちはざわついていたのだけど。 その日は気分が良かったのだろうか。 若はいつもより速かった。 俺は手綱を揺らし、心地良さそうに風を受けて直進する若の背中を追いかけた。 桜は満開をやや過ぎた頃か、すでに散り初めていた。 それでもこの辺りでは一番の桜絶景である。 何百本、何千本咲いているのだろう。 木の下に立って空を見上げると、青空はすべて桜色で塗り替えられた。 馬から降りると、時々はらはらと落ちてくる花びらを目で追いながら歩いた。 雨が降ったら地面がこの色で埋め尽くされて、それはそれで綺麗なんだろうなあと下を向いていたら、花びらが点々とする所に若が腰を下ろした。 言葉はなかったが、座ったままこちらに手が差し出された。 視線の先の若に微笑み返した後、俺はその手を取った。 この手ももう見慣れてしまったが、初めて気がついた時はぞっとした。 明らかに以前と違う、骨の浮いた手の甲。 いつの間に、こんな...。 この人は、痩けたときそれが手に出るのだと、その時妙に成る程と思ったのを覚えている。 そんな冷静な自分が恐ろしかった。 でも、まだ顔じゃなくてよかった。 肌艶は幾分失われていたものの、無駄のない精悍な顔立ちに病による変化はほとんど感じられなかった。 もしも顔だったら、見るたびに俺は無意識で眉根を寄せてしまうかもしれない。 それは、若にとても失礼な気がしたから。 鍛練が満足にできないせいか、あるいは病に力を使いすぎて身体が追い付かないせいか、もはや精気を身体に留めておけずにいることが見てとれた。 こんな所で座る若なんて。 俺は、若の隣に腰を下ろした。 今はまだ馬に乗ったり自由に出掛けたりできる。 だけど、この人はこの先いずれ、いや、近いうちに床に伏すことになるのだろう。 若と俺を囲む桜を見上げた。 若の最期なんて考えたこともなかった。 俺の方が先だと、疑いもしなかったから。 万が一のときに用意していたものは 誰かに殺られたのならば、俺が地獄の底まで追いかけて殺ればいい。 戦で死なせてしまったのならば、守れなかった自分を呪い殺せばいい。 ということだけだった。 だけど、そのどちらも叶わないことだってあるのだということを、戦の返り血で自分が汚れれば汚れるほど、すっかり忘れていた。 そういえば、予定なんてのはいつだって簡単に変更を迫られるものだったということも、すっかりと忘れていた。 「変更したくない予定もあるのにね、若。 」 声がこぼれた。 俺としたことが、珍しく本物の手詰まり? 手詰まりにしているのは、頑なに受け入れようとしない自分自身だということはわかっているのだけど。 「駄目だなあ。 」 言いたくない言葉ばかりが声になる。 強い風が吹き、優しい色の花びらが紙吹雪のように二人の頭に、身体に降ってきた。 「何かの祝い事みたいに、これ。 」 若の髪に舞い降りた小さな花びらを二つ三つ、指で摘まむ。 美しいばかりの桜と愚図つく自分の心との対比が、可笑しくも腹立たしい。 「お前は何故、何も言わぬのだ。 」 若は突然に俺の目の前で手を広げると、骨と血管が目立つ甲をこちらに向けた。 いよいよ来たなと思ったら、もはや溜め息しか出てこない。 俺が何にも気づいていないだなんて... 思ってないよね?まさか。 」 「あとどれくらいもつと思う?俺は。 」 こんな時まではっきりした声で毅然と話してくる若に苛々した俺は、わざと悪態つくように吐いた。 「知らないよそんなこと。 」 一緒に気持ちまで捨ててしまったのか、何かが決壊しそうな予感がした。 そんなの... そんなの、若が一番知ってるでしょうに。 」 ゆっくり下ろされようとしていた若の手を力任せに掴むと、俺は自分の目に押し付けた。 「こんな手になっちゃって... どんな気持ちで俺の隣にいるのさ?... どんな思いでずっと俺に声かけてたわけ?今までずっと黙ってついてきたけど...... 」 (俺だって、泣きたくなることあるよ。 ) 最後は踏み留まった。 これを言ってしまうと、馬岱というものが崩壊してしまう。 もちろん、言葉だけでなく涙そのものもこぼさないように。 若はこんな俺を見て、今どんな表情をしているのだろう。 嗚咽になりそうな呼吸を押し殺し、整えることで一杯一杯の情けない俺。 こんなとき、俺はやはり 「従兄」ではなく「従弟」なのだと実感してしまう。 隣にいる若の方が、俺よりたくさん生きてるんだと。 きっと今、若はやっぱりいつも通りの真っ直ぐな顔で前を向いている。 俺は、若の手で目を塞いでいるから見えないけど。 そうであって欲しい。 残酷だけど、俺の唯一無二である若は、そうに違いない。 [newpage] 「もっとお前と話をしたいのだがな。 身体が言うことを聞くうちにと思っていつも誘うのだが、うまくいかぬものだ。 」 少ししてから、照れくさそうに目を細める若の顔を確認した。 外見は変わったところがあるけれど、若が病人にはなってしまっていないことに安心した。 何も言わず、俺は両方の手で若の手を包み込むようにしてさすりながら、今、この手を離したくないなあとだけ思った。 いつ何時もこの調子で話していたつもりではあったけれど、若の病を知って、更にそれが少しずつ進んでいることを知り、自分でも気づかないうちにどこか身構えるようになっていたのかもしれない。 そして長引けば長引くほど、俺も気が滅入っていたことは事実だった。 そんな雰囲気を若に与えてしまっていたのかもわからない。 折角時間をくれていたのに、話しかけにくかったことだろう。 「ごめんね若。 なんていうか... 前例がなくてさ。 」 「俺だって初めてだ。 」 「... そりゃそうだよね。 」 こうしている今も、若が一番辛いだろうに。 「どうやら、俺が戦場で最期を迎えることはなさそうだな。 」 「それはわかんないよ... 」 「この手ではもう。 」 若は低い声で言うと、俺の手の下にあるその手を拳にし、力を込めた。 チラッと若を見たけれど、その顔が穏やかで、意外だった。 病は気からの癖に、自分の幕引きには決心できているのか。 精神力が強いのか弱いのかわからない。 [newpage] 「時に岱よ。 お前は何故俺のことを若と呼ぶのだ?」 急に何を言い出すのかと思えば。 何故って......。 だって若なんだもん。 そんなの昔からずっとそう呼んでるから、理由なんて考えたことないよ。 」 「我が一族も俺とお前だけになってしまった。 俺はもう馬家の当主でもない。 」 「んー...。 でも、やっぱり若は若なんだけどなあ。 」 「いつまでもその呼び名で呼ばれると... 色々と昔を思い出してしまう。 」 変な調子で湿っぽくなりそうな気がして、俺はたじろいだ。 「結局のところ、馬謄の息子として俺は一体何ができたのだろうな。 父上らが築き上げてきたものを、俺は全て壊してしまっただけなのではないのか?」 壊してしまったのならもう一度創り上げればいい、と言いかけたが、この期に及んでそれはもうなしだ。 「お前が血を繋いで馬家を再興してくれればよいのだがな。 」 この期に及んで、それもなしだと思っている。 「うーん、俺は若の手綱を預かっているからね。 そんな気にはなれないというか。 少なくとも、これを握らされているうちは、俺は誰よりも若のことを守っちゃうからさ。 」 酷いことを言わないようにと、言葉を選ぼうとしていた。 若に対してそんな自分がいる。 そのことが、どうにも辛かった。 「本当ならば俺がお前のことを...。 一族を守ることができなかった俺にはもう、最後の一人にしてしまったお前のことをこの命にかえてでも守る他あるまいと...。 だが、それすらももはや... 」 胸が痛い。 喋んなくていいのに、若。 大丈夫。 俺は絶対大丈夫。 あの時だって、ちゃんと若のところに戻ったでしょ?俺は這いつくばってでも生きるからね。 若がいるんだもん。 死ねないに決まってるじゃない。 」 「そうだな。 」 静かに頷き、そのまま俯く若の手を強く握った。 「俺は若を守るためにいるんだよ。 この手綱は、何があっても離さない。 」 「だがそれももう、あと暫くだ。 」 穏やかに微笑もうとする若を見て痛々しいと思ったのは、これが最初で最後だった。 「馬岱よ。 結局最後まで辛い思いをさせてしまったな。 すまなかった... 長い間。 」 だからだから... 言葉なんていらないのに。 俺は若の身体に恐る恐る触れると、抱き寄せた。 服を着ているので今までわからなかったが、思っていた以上に肉が落ちていたその身体を抱き締めたとき、涙があふれた。 不覚だけども、もはや生理現象に近くてどうすることもできなかった。 顔を見られなくてよかった、と思った。 「何言ってんのさ!若が生きててくれてよかった。 俺はあの時、一番にそう思ったよ。 本当だからね!ほんとに!」 俺はもう構わずに鼻をグジュグジュいわせて泣いた。 いいよ、もう。 最初で最後にするから。 今泣いとくよ。 手でさっさと涙を拭うと、少しの間若の背中をゆっくりとさすっていた。 若の身体が早くよくなりますように。 何のお祈りなのかまったくもって意味がわからないが、まるで風邪をひいた小さな子どもに言うように、そんなことを呟いていた。 無防備に俺に身体を預ける若の呼吸は浅く、肩で息をしていることがわかった。 これは風邪なんかではない。 俺が祈って治るんなら、ご飯抜きで睡眠なしで死ぬまで祈り続けることだろう。 これ、よくはならないんだろうな。 だったらせめて、少しでも若の身体が楽になりますように。 [newpage] 「... ありがとう... 」 そう言うと馬超は口に手を当て顔を背けた。 「どうしたの?」 「改まって礼を口にするというのはその... 気恥ずかしいものだな。 」 ああ、この表情も俺は忘れることはないのだろう。 「若っ!」 「?」 ここから先、俺が泣くことはない。 若が逝くその時も。 俺が今日流した涙は若のもの。 若のためだけに、俺は最後の涙を流した。 だからもう、 俺は決して泣かない。 さあ、最初で最後だよ。 真っ直ぐに目を見て言おう。 「ありがとう若。 生きててくれてさ。 」 「... お前が、俺をここまで生かしてくれたのだな。 」 「その言葉、そっくりそのまま若に返すからね。 」 「お前にこの想いを伝えるのに相応しい言葉が見つからんな。 」 「何にもいらないよ。 」 ただ、そこにいといてよ。 そこにいてくれたら、それで。 「あと少し... 傍にいてはもらえぬか。 」 「もちろん。 」 「ああ。 」 「ありがとう。 いつも、俺を傍に置いてくれて。 」 もう若は、俺を見て頷くだけだった。 「ありがとう。 俺と一緒にいてくれて。 」 最期の時まで、俺が共に。 約束するから。 若は少ししんどそうに肩を上下させ、声を絞り出した。 お前は、俺の誇りだ。 この時代を馬岱と共に生きられたこと、感謝する。 」 「俺も。 」 そして、この人と同じ血が自分の身体にも流れていることが、俺の永遠の誇りだ。 [newpage] その日を境に、若が俺を誘うことはなくなった。 そこから本当の別れがくる時まで、若が床から立つことはなかった。 物音もしない部屋で波風立つこともなく流れていく時間は、生まれて初めて経験するほどに穏やかなものだった。 物言わぬまま眠り続ける若の傍らに座り、ただ寄り添うだけの日々。 そんなだから、別れの日まではやたらと長かったように思う。 「俺たちにこんな時間ってなかったよね。 」 一族のために駆け抜けてきた若。 そして、重すぎるものを背負い続けて。 「それ下ろして。 最期くらいはゆっくりしなよ。 」 勝手に独り、若に話しかける。 「今日も俺はここにいるよー。 」 息を潜めて若の顔をじっと見つめてみるが、何か声が返ってくるわけでもない。 それにしても何故、ここに立って見下ろすのが俺で、こんな風に床に伏しているのが若の方なのだろう。 「若の方がずっと勇猛果敢で立派で、だから俺の自慢なのにさあ。 」 考えても仕方のないことなんだけれど、こういうのは生きていた方がいい人に限って先に逝っちゃうものなんだよね。 俺たち、一緒には死ねないってわかってたけど。 「まあでも、若が先でよかったかも。 もし逆で若を残すことになっちゃったら、それはそれで俺、悩んじゃうよねえ。 」 残されて罰を受けるのは俺でいい。 俺の方でよかった。 やっぱありがとう。 こっから先は、俺が全部どうにかするからさ。 若はもう... 背負わなくていいから...。 「きれいな顔しちゃって。 」 持ってきた布を水に浸して絞り、若の額を拭う。 「俺、目を開けてちゃんと見届けるから。 心配しないでよー。 」 最期まで傍にいることを、先日桜の木の下で約束した。 「若と約束なんかするのも、よく考えたら最初で最後だよね。 」 やっぱりちくちくと胸が痛む。 若の顔と手を拭いた後、ゆっくりと髪を撫でた。 出掛けることがなくなり、体力を消耗することがなくなったせいか、身体が痩せ細ることもなくなった。 本当に、寝ているだけ...。 不思議な感じで、俺は飽きることなくじーっと見つめていた。 じゃなくて、熱い男だったのに。 「肝心のことは最後まで言わなくてさあ。 ま、それは俺も同じだったけど。 」 だけどあの日、最後の最後に目を見て話すことができてよかった。 若も、そう思っているはずだ。 「でも、静かな若ほど落ち着かないものはないよねー。 」 落ち着かないと感じるうちは、まだ俺はこの世に残っておくべきなのだろう。 俺が何言っても独り言になってしまうようになったのは、この頃からだ。 部屋の空気がちょうどいいくらいに暖かく、若の枕元でその手を握ったままうとうとしそうになったその時、突然、若が俺の中に別れを告げにきた。 『さらばだ馬岱。 また会おう。 』 俺は、はっとして若の手を握り直した。 穏やかな顔でよかった。 「うん。 またね、若。 」 俺はそれだけを伝えた。 別れは、これでいい。 ねえ若。 もう、俺も目閉じていいよね。 眠たくなってきたから このままちょっと... ここで休ませて。 俺は若を見送ると、目を閉じた。

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「言葉」のおはなし

別れ の 言葉 はなし か

次に、寿退社する先輩へ贈る言葉ですが、結婚は人生の中で大きなイベントです。 感謝の気持ちと共に、相手への祝福の気持ちを伝えることが大事です。 『例文1』ご結婚おめでとうございます。 素敵な旦那様と楽しい日々を過ごしてくださいね。 どうか末永くお幸せに!『例文2』ご結婚おめでとうございます。 明るく楽しい家庭を作ってください。 いつまでもお幸せに! 『例文3』ご結婚おめでとうございます。 いつもアドバイスをいただきありがとうございました。 これからは素敵な旦那様を全力でサポートしてあげてください。 末永くお幸せに。 現在の相手を気遣い、明るい未来が想像できる言葉を選びましょう。 どうかゆっくり休養をしてください。 そして、一日も早く元気な姿が見られる日を待っています。 今はしっかり休養して焦らず治療に専念してください。 『例文3』少しのんびりと療養してくださいね。 一日も早いご回復をお祈りしています。 また元気にお会いできるのを楽しみにしています。 今後もお体にお気をつけて、楽しい毎日をお過ごしください。 『例文2』今までありがとうございました。 長年のご指導ありがとうございました。 『例文3』大変お世話になりました。 新たな出発が実り多きものとなりますよう心から応援しています。 『例文4』大変お世話になりました。 これからも素敵な人生を歩まれますよう心から祈っております。 シンプルでも感謝の気持ちが伝わる言葉を書きましょう。 『例文1』定年おめでとうございます。 これからの第二の人生、素敵にお過ごしください。 『例文2』長年、ご指導ご鞭撻頂き、ありがとうございました。 今後ともお身体にはお気をつけください。 最適なお別れのメッセージで相手に感謝の気持ちを伝えましょう お別れのメッセージを退職事由別にご紹介いたしましたが、お役にたちましたでしょうか?退職というのは人生の節目で、本人にとっては後の人生でも振り返って思い出す大事な瞬間になることも多いのではないでしょうか。 そんな大事な節目にそれまで一緒に働いた会社の人たちから贈ってもらえる言葉は心に残るものになるかと思います。 せっかくの機会なので、あなたの感謝の気持ちを適切な言葉で伝えたいですよね。 是非、この記事で紹介した例文を参考に、相手に伝わるメッセージを書きましょう。

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別れのきっかけに!彼氏に「言ってはいけない」ワード5選|feely(フィーリー)

別れ の 言葉 はなし か

ダリア視点 「……こんばんは、セドリック」 ポッター 一 ・ 人 ・ 分 ・ の寝息が響く医務室の中、私は寝息も立てずに横たわるセドリックに静かに話しかける。 彼の死体には何処にも傷がなく、まるで本当にただ眠っているだけのような顔をしている。 それこそ今この瞬間に再び起きるのでは思える程だ。 でも現実は違う。 彼は死んでいる。 試合前に、 『この学校一番の成績の生徒に褒めてもらえるなんて。 君の言う通り不思議と緊張をあまり感じていなかったけど、君の言葉でより自信が出たよ。 ……今回も観戦してくれるんだよね?』 そんないじらしいことを言っていた青年は……もうこの世のどこにもいない。 それが分かっていても私はここに来ずにはいられなかった。 私が行けば、彼はいつものように嬉しそうな声を上げてくれる。 最初は警戒していたというのに、最後にはそれこそダフネと同じくらいの親しげな声で。 そう心のどこかで思っていたのだ。 でももうその声も私は聞くことはない。 認めよう。 いや、私は認めなくてはならない。 私は彼のことを気に入っていた。 最初こそ彼のことをただの駒だとしか思っていなかった上、今もそうであるべきだったと思っている。 でも現実は違う。 彼が死んでから、私は初めて自分の感情を素直に受け入れることが出来た。 皮肉なことだ。 もうどうしようもない段になって、私は自身の彼への感情を認めることが出来たなんて。 私は彼の……臆病でありながら家族を思い、家族や仲間のために勇気を振り絞る姿を非常に好ましく思っていたのだ。 冒険や危険に憧れているわけではなく、等身大の普通の男の子としてただ家族のためを思う。 その姿に私は非常に好感を抱いた。 それこそただの駒でしかなかった彼を、ただ純粋な気持ちで応援し始める程に。 つまり彼はいつの間にか……私にとって初めてできた親しい年上の存在になっていたのだ。 「本当に愚かですね私は……。 貴方もそう思うでしょう?」 当然答えなどない。 いくら質問しても聞こえてくるのはポッターの寝息のみ。 聞こえてきたとしても、 『ダ、ダリア・マルフォイ。 ど、どうして君がここに?』 そんな彼との思い出ばかりでしかなかった。 初めて彼とコンタクトを取った時のことを思い出し、何とはなしに表情が僅かに綻ぶ。 思い返せば何だかつい先日のことのようだ。 初めは私のことを完全に警戒していたセドリック。 当然のことだ。 彼にとって私は恐怖の対象でしかなかった。 他のホグワーツ生が全員私のことをそう思っているように。 顔をこわばらせ、それでも必死に私に恐怖を悟られまいとしていた。 しかしそれも一時的なもの。 最初に彼の一番欲していた言葉を与えたのが功を奏したこともあるが、彼はみるみる私のことを警戒しなくなっていた。 クリスマス・パーティーの際に至っては、 『別に付き合っているわけではないんだ。 ダンスを誘って、彼女が受けてくれた。 それだけの関係さ。 ま、まぁ、いずれは付き合いたいとは思っているけどね……』 私にチョウ・チャンとの恋愛話までする程に。 もはや警戒も何もない。 本当に……彼は一体私なんかのどこに警戒心をなくす要素を見つけ出したのだろう。 私はこんなにも……醜い存在であるというのに。 結局彼に 危 ・ 険 ・ が ・ 及 ・ ぶ ・ と ・ 分 ・ か ・ っ ・ て ・ い ・ て ・ も ・ 、私は彼を最期まで焚き付け続けたというのに。 そこまで考え、少しだけ綻んでいた私の表情が再びいつもの無表情に戻るのを感じた。 明るい思い出は全て暗い罪悪感に飲み込まれ、口か漏れ出る言葉は、 「ごめんなさい……」 もはや謝罪の言葉しかあり得なかった。 静かな医務室に私の謝罪の言葉が溶けていく。 謝罪しても何も変わらない。 謝罪をするべき相手はもうこの世にはいない。 出来たとしても、これからのことを思うと出来るはずもない。 本来なら彼の死を嘆き悲しんでいるであろう両親に謝るべきなのだろうが……それも私には出来ない。 私は失敗したのだ。 セドリックという犠牲を払ったにも関わらず、最終的に奴の復活を防ぐことすら出来なかった。 そう私を人を殺すための道具として生み出し、マルフォイ家を未だに縛り続ける あ ・ い ・ つ ・ の復活を。 奴が復活した以上、私が今まで通りの平穏な日常を過ごすことが出来るとは到底思えない。 だからこそ奴の邪魔を少しでもしようと、私にできる範囲のことを手探りで行っていたというのに……。 しかもそれが今考えると本当に奴の計画を邪魔する最適解であったというのに……結局私は何もすることが出来なかった。 得たのはセドリックをただ殺してしまったという罪悪感のみ。 私の平穏は今日をもって崩れ去ったのだ。 本当に嫌になる。 セドリックを殺したというのに、結局未だに自分の心配ばかりしている。 彼からすれば薄情極まりない怪物に思えることだろう。 だからこそ思うのだ。 確かに私はセドリックの死に対して罪悪感を感じている。 でも……私は本当に彼のことを悼み切れているのだろうか、と。 本当は罪悪感より不安の方が強いのだ。 彼の死を悲しむ気持ちはあるのに、それ以上に将来の不安感の方が先立っている。 寧ろ彼の死に罪悪感を感じることが、私に課せられた義務でしかないように感じている。 こんなことが許されるのだろうか。 こうしてここに来たのも、私自身に改めて自身の罪を認識させるためなのだ。 そうしなければ彼の死を真の意味で実感することも出来ずにいる。 未だに彼が突然起き上がり、 『やぁ、ダリア』 などと声をかけてくるのではないかと心のどこかで期待しているのだ。 頭では理解していても、突然彼が唐突にいなくなってしまったことに実感が湧かない。 何だかセドリックと共に同じ時間に置き去りにされたような気分だ。 それとも私は……本当は彼の死をどうでもいいことと本心では感じているのだろうか。 私は彼とこの一年ずっと会話していたのに……私が彼を殺したというのに、彼のことを本当はどうでもいいと本心では……。 これでは彼のことを忘れて眠りこけている城の連中と同じではないか。 だから私は繰り返す。 「ごめんなさい……。 ごめんなさい……」 何度も 自 ・ 分 ・ に ・ 言い聞かせるように。 未だに湧かない実感を、決して忘れないようにするために。 私がセドリックを殺したのだと。 だから……どんなに実感が湧かなくても、もうこの世にセドリックはいないのだと。 繰り返す。 私はただ繰り返す。 「ごめんなさい……。 ごめんなさい……」 しかしそれでも……夜がいよいよ更け、私もそろそろダフネやお兄様が待つ談話室に戻らなくてはならない段になっても私は結局、 「ごめんなさい……」 私は彼の死を真の意味で実感することも出来ず、 涙 ・ の ・ 一 ・ つ ・ も ・ 流 ・ す ・ こ ・ と ・ も ・ 出 ・ 来 ・ な ・ い ・ ……人でなしの怪物でしかなかった。 ……私は皆とは違う。 私はニンニクの臭いが耐えられない程嫌いだ。 でも大丈夫。 そんな私を思って、お母様とドビーはいつも私の食事からニンニクを除けておいてくれる。 私は一月に一回血液を飲まなくてはいけない。 でも大丈夫。 そんな私にお父様達は毎月血液を送ってくださっている。 ホグズミードに行ったダフネが吸血鬼用の飴をこっそり買ってきてくれる。 私は人より力が強い。 何も対策をせねば、それこそ日常生活すら満足におくれない。 でも大丈夫。 そんな私にお父様は手袋を下さった。 これをつけてさえいれば、私は少なくとも力に関してだけは普通の女の子になれる。 私は銀の食器を使えない。 でも大丈夫。 そんな私にお父様達は木製の食器を与えて下さった。 これさえあれば私も家族と食卓を囲むことが出来る。 私は日光の下を歩けない。 皆と共に外で遊ぶことも出来ない。 でも大丈夫。 私にはお兄様やダフネがいる。 外に出れない私に付き添い、私と共に過ごしてくれる人達が。 私は蛇と話すことが出来る。 それは私が奴に作られた存在であることを何より表している。 でも大丈夫。 こんな人間でもない私を、マルフォイ家やダフネは受け入れてくれた。 私の幸せはこの大切な人達の中にこそある。 でも……それなのに私は……やはりそれでもどうしようもなく、そんな美しい世界を穢す怪物でしかなかった。 何故なら私は……セドリックを 殺 ・ し ・ て ・ し ・ ま ・ っ ・ た ・ のだから。 罪悪感を感じてはいても、 親 ・ し ・ い ・ 人 ・ の死を悲しむことすら出来ないから。 ……涙の一つも流してあげることが出来ないから。 私は思う。 もし私があの時少しでも今年起こることの一端を掴んでさえいれば。 私は彼を……セドリックを殺さずに済んだのではないか? 怪物になる、その第一歩を踏み出すことは無かったのではないか? そう、私は今年の最後に思ったのだった。 ……でも、こうとも思っていた。 もし私が気付いていても……私は結局彼を 喜 ・ ん ・ で ・ 殺すことになったのではないのだろうか? 義務感からでなくとも……その魂から湧き上がる衝動によって……。 親しい人の死に涙も流せない。 私という怪物はどう足掻いても、どう運命に逆らおうとも……決して怪物であるという事実から逃れることは出来ないのだから。 ……もう私には怪物になるしか道が残されていないのかもしれないのだから。 だから私は最後まで、 「ごめんなさい」 ただ涙もなく、中身のない謝罪の言葉を繰り返すしかなかった。 ダンブルドア視点 「ダ、ダンブルドア! 一体どういうことだ!? ム、ムーディが偽物だった!? この学校は世界で一番安全な場所なのではなかったのか! だ、だからこそ私はここに来たのだぞ!」 校長室にカルカロフの怒鳴り声が響く。 彼にはここに来た当初の余裕など欠片ほどもなく、表情や服装もどこかやつれたものにすら見えた。 原因は勿論ヴォルデモートの復活。 今夜は彼にとって最も恐れていたことが起こった日じゃろう。 カルカロフは他の死喰い人を売ることによって生き延びた。 それをあのヴォルデモートが許すとは思えぬ。 つまり彼の運命は……今日決まったということじゃった。 彼に残された道は二つのみ。 一つは何とかヴォルデモートから逃げ延びること。 魔法省がヴォルデモート復活を認めておらん状況で、奴から逃げ延びるのは至難の業じゃろうが……もはやそれしか道はない。 無論もう一つの道もあるにはある。 それは、 「そうじゃ、カルカロフ。 その件についてはワシの目が耄碌しておったとしか言えぬ。 全てはワシの責任じゃ。 じゃが……カルカロフよ。 それでもワシはここを世界で最も安全な場所じゃと……いや、そうしようと全力を注ぐ心づもりじゃ。 ここには来年も生徒達が変わらず通い続けるのじゃからのぅ。 じゃから……もしお主が良ければ、お主もここに身を隠さぬか?」 このままここに留まるという道じゃった。 彼を信用しておるわけではない。 横に控えておるセブルスなど、表情からワシの提案を完全に間違ったものと思うておることが伺える。 じゃがもしここで彼を見捨てれば、彼は十中八九殺されてしまうじゃろう。 それを分かっておりながら、彼にむざむざ見捨てるのは人の道に反すると思うたのじゃ。 じゃが残念なことに、カルカロフの僅かにあったワシへの信頼感は今回の一件で完全に崩壊したのじゃろう。 ワシの提案に更に怒りを募らせた様子で続けた。 「馬鹿なことを! そう言って私を使い倒すつもりなのだろう! そう言ってお前は私を殺すつもりなのだ! 何がここは世界で最も安全な場所だ! まんまと出し抜かれていながら、よくも抜け抜けと! それにここにはマルフォイの娘がいる! あの純血貴族の間でも有名な、ダリア・マルフォイ 様 ・ がだ! 俺はあのお方に取り入ることに失敗した! そこにいるセブルスに邪魔をされたからな! 全てお前の差し金なんだろう!? お前は俺の命などどうでもいいと思っているのだ! そんな奴の場所が安全!? 馬鹿なことを言うな! 最初はセブルスに頼んでここで匿ってもらうつもりだったが、」 「無論吾輩は反対だ。 こちらとしてもお前のことを信用などしておらん。 出て行きたければ出て行くがいい。 別に誰も止めはしない」 「そら見ろ! ここにいれば今度はお前達に……それにダリア・マルフォイに殺される! こんな所にこれ以上いられるか! 言っておくがな、セブルス! 今お前はそうやって平然としているが、お前も俺と同じ立場なんだぞ! ダリア・マルフォイに取り行ったからと言って、お前が助かる道などありはしない! 闇の帝王は決して裏切り者を許すことがないのだ! くそ! こうしていられない! 私は今すぐ逃げるぞ!」 「……お主の生徒達はどうするつもりじゃ? 今校長であるお主に置き去りにされれば、」 「知るかそんなこと! あいつらは私が権力を得るための道具に過ぎない! それも命があってのことだ! ガキ共のことなど考えていられるか!」 そして一通り怒鳴り散らした後、カルカロフは校長室を出てゆく。 これで彼は本当に逃げるしか道がなくなった。 彼が逃げきれればよいが……それも望みは薄いじゃろう。 ワシはおそらくこれが 最 ・ 後 ・ になるじゃろうカルカロフの後姿を見つめた後、ため息を吐きながらセブルスに話しかけた。 「……残念なことになったのぅ。 ワシとてカルカロフのことを信用してはおらぬが、死んでほしいと思うたことなどない。 それにヴォルデモートに捕まれば、彼はもっと悲惨な目に遭うやもしれん。 出来ることなら目の前の命を助けたかったが……」 「幻想ですな。 奴は信用できない。 奴は簡単に裏切るような男だ。 もし闇の帝王が奴を許す代わりに、何かしらの情報をもたらすよう提案すれば……奴は間違いなく再び向こうに寝返ることでしょう。 そんな者をこの城の中に置いておけるはずがない。 だからこそ、貴方も止めなかったのでしょう?」 セブルスの言葉にワシは何も言えんかった。 つくづく嫌な年の取り方をしたものじゃ。 セブルスの言う通り、ワシは提案こそすれ最後まで彼を留めようとはせんかった。 寧ろ彼がここを去ったことでホッとしてすらおる。 彼が殺される可能性が高いと分かっておりながら……本当に嫌な立場になったものじゃ。 しかしそれを議論しておっても何も変わらぬ。 事態は今こうしておる間にも刻一刻と悪化しておる。 ファッジが護衛として連れてきた吸魂鬼によって、唯一の証人であるクラウチ・ジュニアは物言わぬ屍同然の状態になってしもうた。 そしてファッジも恐怖のあまりヴォルデモートの復活を認めようとはせん。 全てが奴の都合のいいように進んでおる。 リリーの守り呪文も、ヴォルデモートがハリーの血を使って復活したため奴にはもう効かぬ。 ……もっともそれにより逆に奴がハリーを殺すことが 出 ・ 来 ・ な ・ く ・ な ・ っ ・ た ・ 可能性もあるわけじゃが……今そんな不確かなことを考えている場合ではない。 やらねばならんことは山ほどある。 ハグリッドにはもう出立の用意を言い渡しておる。 彼が巨人と上手く交渉できれば、敵の戦力を大幅に削ることが出来る。 そしてアラスターには嘗ての『不死鳥の騎士団』メンバーへの声掛けを。 解放されたばかりのところを申し訳ないと思うたが、早急にこれを成し遂げねば敵の勢力に対抗出来ぬ。 そして最も大切な仕事は、 「セブルス……早速で悪いが、すぐに奴の下へ。 これはお主にしか出来ぬことじゃ。 お主に最も危険な仕事を任せることになるが……」 「分かっております。 そのために吾輩はここにいたのですから」 セブルスに 二 ・ 重 ・ ス ・ パ ・ イ ・ になってもらうことじゃった。 敵の狙いや行動を知るための、最も殺される危険の高い仕事を……。 彼の罪悪感と愛情を利用しているようで申し訳ないが、彼ほどこの任務に適した人材はおらぬ。 ワシには……いや、ワシらには彼の働きが最も重要なのじゃ。 じゃからこそワシは迷いながらもセブルスにその任務を与え、彼も彼でそれを分かっておるからこそ、こうして迷いなく校長室を後にしようとしておる。 全てはリリーの息子であるハリーを守るために。 ……じゃが彼にも全く何も悩みがないわではないらしかった。 校長室のドアを開ける直前セブルスは一瞬立ち止まり、ワシが最も懸念しておる不安を口にする。 「それはそうと……。 まさかダンブルドア。 貴方までポッターの妄言を信じているわけではありませんな?」 「……妄言とは何のことじゃ、セブルス」 「分かり切ったことを聞かないでいただきたい。 ダ ・ リ ・ ア ・ ・ ・ マ ・ ル ・ フ ・ ォ ・ イ ・ に関してのことです。 まさか彼女が……ポッターの言う通り、死喰い人を纏める存在だと信じておるわけではありませんな?」 その質問にワシは黙り込むしかなかった。 ワシはダリアを警戒しておる。 彼女には嘗てのトムと同じ空気があり、そして今までの行動も不可解極まりないものが多い。 じゃが今まで知り合ってもおらんはずの彼女をトムが気にかけておる。 それもまだまだ14歳の少女を。 それがワシにはどうしても納得できることではなかったのじゃ。 ……じゃが同時にハリーが嘘を吐いているとも思えぬ。 ハリーは素直な子じゃ。 あの場で態々ダリアの名前を出してまで嘘を吐くはずがない。 ハリーが証言したのじゃから、それは間違いなくトムがダリアのことを言及したということなのじゃ。 今回明るみになったセドリックへの介入、そしてヴォルデモートの言葉。 ますます彼女への警戒心が募るばかりじゃ。 彼女にはあまりにも不可解な要素が多すぎる。 内心ではこれまで以上に彼女を警戒しなければならんと……ましてや彼女はただでさえあのルシウス・マルフォイの娘なのじゃから警戒せぬ道理はないと思うた。 彼女が敵の戦力になればあまりにも大きな脅威となる。 もっともそれをセブルスに素直に答えても仕方がない。 彼はスリザリンの寮監であることからダリアを気に入っておる節がある。 どこか彼女への目が曇っている所のある彼に、重要な任務直前に余計なことを言うても始まらん。 ワシは一瞬の逡巡の後、セブルスに神妙な声音で答えたのじゃった。 「全てを信じておるわけではない。 彼が勘違いしておる可能性も十分にある。 じゃからこそお主の情報が必要なのじゃ。 ハリーの発言の真偽を確かめるためにも、今は一刻も早く奴の下へ。 何もかもが不確かなことじゃ。 それをお主にこそ確かめてほしいのじゃ」 ワシの答えにセブルスの仏頂面が更に歪んだものになる。 余計なことを言ったつもりはないが、やはりワシの答えに一抹の不信感を抱いたのじゃろう。 じゃが今はそれを議論しておる暇はないと思うたのか、彼はそのまま何も言わずに今度こそ校長室を後にする。 残されたのは彼の今しがた出て行ったドアを何とはなしに見るワシと……そんなワシをどこか非難がましく、そして同時に悲し気な瞳で見つめるフォークスのみじゃった。 ハリー視点 「……まずはじめに、ワシらは一人の立派な生徒を失ったことを悼まねばならぬ。 本来ならそこに座っておるはずじゃった。 そして皆と一緒にこの宴を楽しみ、いつもと変わらぬ笑顔を見せてくれるはずじゃった。 じゃが……彼は亡くなってしまった。 さぁ、皆起立して杯を上げよう。 ……セドリック・ディゴリーのために」 一年最後の宴。 大広間にダンブルドア先生の悲し気な声が響く。 一年最後の宴といえば、いつも壮大で華やかな装いが大広間中に施されていた。 でも今はそんなものは一つもない。 教員職テーブルの後ろの壁には黒の垂れ幕がかかっており、一目でそれがセドリックの喪に服しているものだと分る。 そんな中まず初めにダンブルドアが発した言葉によって、大広間にいる全員が一斉に起立したのだった。 誰も彼もが悲し気な表情を浮かべている。 ハッフルパフは勿論、あのスリザリン生達ですらどこか神妙な表情をしている。 ただ一人……ダリア・マルフォイを除いて。 あいつの方を見れば、この大広間でただ一人いつもの無表情を浮かべていた。 そこにはセドリックの死への悲しみなど微塵も感じられない。 僕同様……あいつもセドリックを 殺 ・ し ・ た ・ 人間の一人だというのに。 僕はあいつの無表情を睨みつけるが、その間も皆の唱和が響いた後ダンブルドアの言葉は続く。 「セドリックはハッフルパフ寮生の中でも特に模範的な生徒じゃった。 忠実な良き友であり、勤勉であり、フェアプレーを尊んだ。 更には誰よりも 勇 ・ 敢 ・ であり、皆も知っての通り三大魔法学校対抗試合にも挑んだ。 いくら優勝者には大きな栄光が与えられるとはいえ、それに挑むだけで彼が如何に勇敢じゃったかが分かる」 その瞬間、僕は決して見逃さなかった。 一瞬だけ表情こそ無表情であっても、ダリア・マルフォイがダンブルドアの言葉を鼻で笑うような仕草をしたのを。 セドリックを勇敢だと言ったダンブルドアを小馬鹿にしたような態度だった。 まるでダンブルドアは 何 ・ も ・ 分 ・ か ・ っ ・ て ・ い ・ な ・ い ・ と言わんばかりに……。 でも次に発せられたダンブルドアの言葉により、僕もあいつにばかり気を取られてはいられなくなる。 何故なら彼の言葉は、 「……しかしそんな試合の最中、彼はヴォルデモート卿に殺されたのじゃ」 あまりにも唐突に示された真実だったから。 大広間に恐怖に駆られたざわめきが走る。 僕もあまりの事実にロンやハーマイオニー以外の生徒に真実を話してはいなかった。 知っているのはムーディに扮するクラウチから解放された後、医務室で僕の話を聞いたメンバーだけだ。 だからこれが皆が真実を知る初めての機会だったのだろう。 皆まさかという面持ちで、恐ろしそうにダンブルドアを見つめている。 大広間の所々で、 「あ、あり得ない。 だ、だってあの人は死んだって……」 「な、何の冗談だ? だって魔法省はセドリックのことは事故と……」 恐怖の声がしばらく上がり続けていたが、それをダンブルドアは手で制すと厳かな口調で続けた。 「……魔法省はワシがこのことを皆に話すことを望んでおらん。 彼の死はただの事故じゃったと発表してすらおる。 それは魔法省もヴォルデモート卿の復活を信じられぬから、いや、信じたくないからじゃ。 しかしワシは大抵の場合、真実は嘘に勝ると信じておる。 それに嘘で事実を塗り固めることは、死んでいったセドリックへの侮辱じゃ。 彼は決して己の失敗で死んだのではない。 ただ運がなかった。 彼は偶々ヴォルデモート卿の前に躍り出てしまったばかりに殺されたのじゃ。 それでも彼は最後まで勇気をもって敵に立ち向かった。 それを決して忘れてはならんぞ」 今までざわめいていた大広間もダンブルドアの言葉で再び静まり返る。 彼等が僕のもたらした事実を信じてくれたかは分からない。 大広間を見渡せば恐怖に顔を青ざめさせている生徒もいれば、所々に胡散臭そうな表情でダンブルドアの方を見ている生徒もいる。 スリザリン席に至っては完全に馬鹿にした表情で彼を見ている生徒ばかりだ。 でも、それでも皆が黙り込んでいるのは、ここがセドリックの死を悼む空間だということにあらためて気づいたからだろう。 表情はそれぞれ違っても、皆再び彼の死を悼むように黙り込んでいる。 ……やはり一人だけ、ダリア・マルフォイを除いて。 あいつはあろうことか静まり返る大広間のの中、突然外に向かって歩き始めたのだ。 突然の行動にあいつの周囲の生徒だけは驚いた様子であるが、大多数の人間は悼むように俯いているためあいつの行動に気がついてはいない。 僕が気付けたのも、あいつと同じく大広間で一番入り口に近い場所にいたのもあるが、僅かでもあいつの方に警戒する意識を向けていたからだ。 視界の端で動いた白銀の髪に目を向ければ、そこには丁度大広間を出て行くダリア・マルフォイと、その後に続くグリーングラスにドラコの姿があった。 僕は周りの人間が目を伏せているのを確認すると、そっと奴らの後を追って大広間を後にする。 医務室で僕がダリア・マルフォイの話をした時、ダンブルドアやウィーズリー家の皆こそ信じてくれたが、ハーマイオニーなどは、 『またそんなことを……ダリアがそんなことになるはずがないでしょう』 そんなことを呆れた顔で呟いており、スネイプも小馬鹿にした表情で僕を見ていた。 スネイプはどうでもいいが、ハーマイオニーがあいつのことを信じたままなのは非常に危険だ。 ヴォルデモートが復活した以上、来年からも呑気に敵側の人間と付き合えっていればどうなるか……考えるだけで恐ろしかった。 だから僕はこれからあいつをハーマイオニーから引き離すためにも、あいつに 伝 ・ 言 ・ を伝えるタイミングは今しかないと思ったのだ。 本当は言いたくなんてない。 でも…… 彼 ・ が僕が逃げる直前託してきた伝言だ。 たとえあいつが彼の死を悲しんでいなくても、僕は彼の望みを叶えなくてはならない。 それが彼を、 『優勝杯を掴もう。 ……でも二人ともでだ。 二人一緒に取ろう。 それならホグワーツの優勝に変わりはない。 二人で引き分けだ』 殺してしまった僕に課せられた義務なのだから。 あいつはいつも大勢の取り巻きを引き連れて行動している。 セドリックの死を悼むこの式典で抜け出すのはどうかと思ったけど、あいつが数人で行動していることなどグリフィンドールである僕は滅多に見かけない。 なら今しかないのだ。 この際グリーングラスやドラコが一緒にいることには目をつぶろう。 そう思い僕は、 「ダリア……大丈夫?」 「……ごめんなさい。 何だかあの老害が 彼 ・ のことを語っているのが……とても腹立たしかったもので。 彼が試練に挑んだ理由はあんな陳腐なものではない。 彼の勇敢さは、あんな薄っぺらな言葉で表されるようなものでは、」 「ダリア・マルフォイ!」 大広間から少し離れた廊下で、何かボソボソと話している奴らに話しかけたのだった。 僕の大声に三人が一斉にこちらに振り返る。 そして一瞬でドラコとグリーングラスが、まるで僕からダリア・マルフォイを庇うような立ち位置に移動しながら返事をした。 「ダリアに何の用、ポッター? 貴方がダリアに話すことなんて何もないと思うけど。 何故 こ ・ ん ・ な ・ タ ・ イ ・ ミ ・ ン ・ グ ・ で貴方なんかが話しかけてくるのよ」 「そうだ。 それにお前は大広間にいた方がいいのではないのか? ほら、お前は 英 ・ 雄 ・ 様 ・ なんだろう? きっとダンブルドアもあの後お前を讃える演説をしていたと思うぞ? 主賓が大広間にいなくて平気なのかい?」 出だしから挑発的な言動だった。 特にドラコから発せられた言葉は僕が今最も気にしている事柄で、一瞬怒りで我を忘れそうになった。 僕が話していないため、まだ生徒達の大勢はあの日何があったかを知らない。 でもダンブルドアが大広間で話した以上、いずれは皆にもあの日のことは徐々に知れ渡っていくと思うし、ましてやこいつらの親はあの場にいたのだ。 こいつらが既にあの夜のことを知っていてもおかしくはない。 でもだからこそ腹が立った。 全部を知っていながらこんな挑発的な態度を。 こいつらはヴォルデモートの復活を恐れてはいない。 それどころか歓迎してすらいる。 そしてその過程で犠牲になったセドリックのことなんてどうでもいいと思っているのだ。 僕がこんなにも彼の死で苦しんでいるにも関わらず。 ダリア・マルフォイがどうしてセドリックを優勝させようとしていたのかは分からない。 でもそれが い ・ い ・ 目 ・ 的 ・ であるはずがない。 ハーマイオニーは、 『……それはダリアがあの人の復活を邪魔しようとしていたからよ。 彼女は気付いていたんだわ。 例のあの人が何をしようとしているかを。 彼女だけは敵が貴方をただ殺そうとしているのではないことに気が付いていた。 ……あの子は誰よりも賢いから。 でも……それで彼女は……。 あぁ、 可 ・ 哀 ・ 想 ・ な ・ ダリア……。 きっと彼女は今頃……』 いつもの妄言をしていたけど、こんないつもの冷たい無表情を浮かべている奴がそんなことをしようとしたはずがない。 少なくともセドリックをただの自分に都合のいい駒だと思っていたのは間違いないのだ。 こいつらを見ているとムカムカした熱い怒りが溢れそうだった。 でも僕はそれをグッと我慢し、こいつらから早く離れるためにも用件だけ口にした。 「……ダリア・マルフォイ。 お前に伝言がある。 …… セ ・ ド ・ リ ・ ッ ・ ク ・ からの。 僕が逃げる直前、彼が僕に託した言葉だ」 その瞬間、いつもの無表情こそ変わらなくとも、ダリア・マルフォイは二人の影から勢いよく顔を出す。 言葉はない。 ただ黙って僕の言葉を待っている様子だ。 そんなあいつに、僕は吐き捨てるように彼の言葉を伝えたのだった。 ヴォルデモートの杖から出てきた彼が残した……ダリア・マルフォイへの最後の言葉を。 彼の影は出てきた時言った。 両親のもとに死体を持ち帰ってほしいと。 そして…… 「ごめん、ダリア。 約 ・ 束 ・ を守れなかった……それがセドリックが最後に言った言葉だ」 そんな意味不明で短い言葉を。 彼の影はどこか悲しそうに……そんな言葉を僕に託したのだ。 僕はそれを言った切り、即座に踵を返して大広間の方に戻る。 これで義務は果たした。 僕がこれ以上こいつらと不愉快な会話をする必要なんて無いのだ。 それにこれでもう……こいつらとは完全に敵味方に分かれるのだから。 だから、 「そう……貴方は最後までそんなことを気にしていたのですね。 実に貴方らしい。 ……貴方は 本 ・ 当 ・ に ・ 行 ・ っ ・ て ・ し ・ ま ・ っ ・ た ・ のですね」 背後にいたダリア・マルフォイが先程までの無表情ではなく、その薄い金色の瞳から一筋の 涙 ・ を流していることにも気付かなかった。 「さようなら、セドリック……。 ようやく貴方に……お別れが言えました。 ようやく私は……貴方の死を 実 ・ 感 ・ し ・ て ・ し ・ ま ・ い ・ ま ・ し ・ た ・ 」 ……僕は最後まで気が付くことはなかったのだ。 ハーマイオニー視点 思えばもう全てが遅かったのだと思う。 あのハリーが三大魔法学校対抗試合最後の試練に挑んだ日。 あの日の夜に、今まで信じて疑わなかった日々が終わった。 ……全てがもうどうしようもない所に行ってしまった。 でもそんなどうしようもない事実に私は気づいてはいなかった。 ……気付いていても、本当の意味で信じてはいなかった。 確かに例のあの人は復活した。 ハリーが言うのだからそれだけは間違いないと思う。 これから始まるのは戦争。 きっとこれまで通りの生活は大きく変わる。 でも決して変わらない物もあると信じていたのだ。 そう、この日までは…… 「ではカルカロフがいなくても、貴方達はダームストラングに戻れるのね?」 「そうです。 カルカロフヴぁ、家事を全部ヴォく達にやらせていました。 だからカルカロフがいなくなっても何も変わらない」 煙を吹きだし、今か今かと走り出すのを待っている汽車の手前、私は今年に仲良くなれたビクトールと最後の別れをしていた。 ハリーからビクトールが最後の試練で『磔の呪文』を使ったとは聞いていたけど、『服従の呪文』をかけられていたことでお咎めなしで済んでいた。 だからこうして元気一杯に私の元に別れの挨拶をしに来てくれたのだ。 辺りを見回せば彼だけではない。 ダームストラング生どころか、ボーバトンの生徒もホグワーツ生と別れを告げ合っている。 そこには純粋な名残惜しさだけがあり、皆お互いのことをもう本当の友人だと認識していることが雰囲気だけで察せられた。 私達の近くではフラーとハリー、そしてロンがにこやかに挨拶しており、ハグリッドとマダム・マクシームの話し合っている姿まである。 それは三大魔法対抗試合が本来の目的を果たせたことを何よりも表していた。 そうこれこそが敵に立ち向かうのに必要なことなのだと思う。 友人達との絆。 これこそが強大な敵に立ち向かう力に。 私はこの光景を見て表情が自然に綻ぶのを感じながら、そう心の中で再確認していた。 そしてそれは、 「それではね、ビクトール。 手紙を書くわ! また機会があれば会いましょう!」 「あぁ! ハ ・ ー ・ マ ・ イ ・ オ ・ ニ ・ ー ・ も元気で! いつでもブルガリアに来てほしい! ヴォくも君に会いにまた来るよ!」 いよいよ汽車が動き出し、彼と別れることになっても変わりはない。 私はあまり友達作りが得意な方ではないことは自覚している。 でもそんな私に出来たホグワーツ生以外の友達。 これが嬉しくないはずがなかった。 だから私はこの縁を作ってくれたダリア達に改めて感謝の言葉を口にしなければいけないと思ったのだ。 それにダリアのことが心配なのもある。 彼女は最後の試練の日から、遠目にも分かる程 悲 ・ し ・ 気 ・ な ・ 無表情を浮かべていた。 例のあの人が復活したから……そしてセドリックが死んでしまったから。 ハリーの話を聞いて私は、ようやく彼女がどうしてあんな表情を浮かべているかに気が付けたのだ。 だから私はクラムやフラーに大きく手を振るハリーや、その横で少しだけ複雑な表情を浮かべながらもしっかり手だけは振っているロンに隠れて汽車の中を進む。 あの日からどうにもハリーが本気で私をダリア達の下に向かわせないようにしていたことから、私は容易には彼女に近づくことが出来なかった。 彼女達に会うならこのタイミングしかない。 ドビーを介したやり取りも今では 必 ・ 要 ・ な ・ く ・ な ・ っ ・ た ・ 上、手紙を出しても、 『……申し訳ありませんです、グレンジャー様。 お嬢様から返事のお手紙は 受 ・ け ・ 取 ・ っ ・ て ・ い ・ な ・ い ・ のでありますです。 ……ダリアお嬢様は今、とても落ち込んでおられるご様子で」 ダリアから返事が返ってこなかったのだ。 これを逃せばいつ彼女と話せるか分かったものではない。 私は彼女に会って伝えなければならない。 ビクトールと引き合わせてくれたことへの感謝を。 そしてセドリックの死は、決してダリアのせいなどではないのだと。 果たして彼女がいるコンパートメント自体はすぐに見つかった。 視界の端にあの特徴的な白銀の髪が見える。 そしてその周りにこれまた綺麗な金髪に、ホワイト・ブロンドの髪。 三人のみで一つのコンパートメントを占拠しており、幸いにもいつも彼女達を取り巻く取り巻きは中にはいない。 私は友人達の存在に喜び、その喜びのまま扉を開け、 「ダリア、ダフネ! 良かった! ここにいた……のね」 その恰好のまま固まることになる。 何故ならコンパートメントの中は……異様な程 暗 ・ い ・ 雰囲気だったから。 別に部屋の中が暗いわけではない。 ダリアの体の関係でカーテンこそ閉められているけど、それでもコンパートメント内を照らすには十分な光が入り込んでいる。 しかしそれでもコンパートメントの中が異様に暗いと思えたのは……偏にダリアの醸し出す空気があまりにも暗かったからだ。 ダフネの肩に頭を乗せた状態の彼女は、私の方に一瞬視線を向けても、またすぐにまるで私のことを 無 ・ 理 ・ や ・ り ・ 無 ・ 視 ・ するかのように視線を戻す。 表情はあの最後の試練の後から変わらない、どこまでも悲しそうな無表情。 私の登場に一言も発せず、ただ黙ってダフネの肩に頭を乗せ続けている。 そしてそんなダリアを悲しそうな表情で見つめるドラコに、こちらに反応を示しても、 「あ、あぁ、ハーマイオニー。 よく来たね……」 どこか困ったような曖昧な笑みを浮かべるだけのダフネ。 彼女達の醸し出す空気はどこまでも暗く、とても外の天気が快晴だとは信じられないようなものだった。 私はあまりの空気に気圧されながら、それでもここで踵を返すわけにはいかないとコンパートメントの中に踏み入る。 そしてまず話の取っ掛かりとして当たり障りのない会話から始めることにする。 ……いきなりセドリックの話をすれば逆効果になる可能性がある。 だからまずダフネが片手に持っている今日の『日刊予言者新聞』のことについて話題を振ることした。 ……その間も、決してダリアがこちらに目を向けることはなかったけれど。 「その記事、何も書いていなかったでしょう?」 「う、うん、そうだね。 私も今見てびっくりしちゃった。 あんなことがあったのに、三大魔法学校対抗試合のことさえ何も書いてない。 魔法省が黙らせているのだろうけど、まさかここまで何も書いてないとは思っていなかったよ。 リータ・スキータ辺りは絶対黙ってないと思ったんだけどな~。 あの記者、あんな嘘八百な記事を書きたてたくせに、こういう時にはだんまりを決め込んでいるんだね。 いよいよふざけた記者だよ」 ダフネの少しだけ怒りが滲んだ言葉に私は内心ほくそ笑む。 彼女達が魔法省の愚かな見解を信じていないと再確認できたこともあるが、これは彼女達の興味を引ける話題を提供できるかもしれないと思ったのだ。 数ある嫌なニュースの中でも、これだけはいいニュースだった。 きっとこの子達も喜んでくれるはず。 そう思い私は、 「それなのだけど……実はリータは記事を書いていないのではないの。 今は 書 ・ け ・ な ・ い ・ の ・ よ ・。 彼女は こ ・ の ・ 中 ・ にいるから」 カバンの中から一つのガラス瓶を取り出したのだった。 中には小枝や木の葉と一緒に、大きな太ったコガネムシの姿をした……リータ・スキータが入っていた。 でも彼女達は私が何故このタイミングで一見コガネムシの入った瓶を取り出したのか理解出来た様子ではないため、私はやはりにこやかに話を続ける。 「つまりね、彼女は無登録の『 動物もどき アニメーガス 』だったのよ。 この女はこれでホグワーツの色々な場所に忍び込んで、色々な話を盗み聞きしていたというわけ。 これはハリーが盗聴器の話をしていたから気付けたのだけど、本当にこの女の秘密にたどり着けて良かったわ! 最後の試練の後、この女が偶然医務室の窓辺に張り付いているのを見つけたのよ。 ほら見て、触覚の周りの模様があの女がかけていたやらしいメガネにそっくりだから」 話題の効果としてはてき面だった。 ダフネとドラコは目を見開きながら瓶の中身を見つめ、ダリアも視線だけはこちらに向けてくれている。 最も効果がありすぎて、 「成程! 流石はハーマイオニーだね! ちなみにどうやってあの記者だって確認したの?」 「この瓶に閉じ込めて、正直に反応しなければ一生この瓶の中よって言ったら、本当に素直に反応してくれたわ。 あれでただのコガネムシということは無いはずよ。 それに安心して。 この瓶には汽車に乗る前、中からは外の状況が見えないように魔法をかけておいたから。 これでこの女が私と貴女達が一緒にいるとは分からないはずよ」 「そうなんだ! 貴女がそう言うなら間違いなくそうだね! ねぇ、ついでに カ ・ エ ・ ル ・ を持ってないかな? それこそコガネムシを 一 ・ 飲 ・ み ・ に ・ 出来る奴!」 ダフネが少し暴走気味なことを言い始めたけれど。 どんなに嫌な女であっても、まさかカエルの餌にするわけにはいかない。 私は慌ててリータ・スキータをカバンに再び隠しながら次の話題に移ることにした。 「だ、駄目よ、そんなことしては。 それに彼女とは約束してるの。 もし魔法省に『 動物もどき アニメーガス 』のことをバラされたくなかったら、決してもう私の周囲の人間のことをコソコソ嗅ぎまわって、記事にしないようにって。 つまりこれ以上私の目につくところにいないように言っておいたの。 それを守れるのなら、ロンドンに着き次第解放することになっているわ。 これで他人のことで嘘八百を書く癖が治るか見れるわ。 ……これでもうドビーに頼んで手紙のやり取りをしなくてもよくなるの」 私はそこで一度言葉を切り、これからが正念場だと覚悟して言葉を続ける。 でも、 「私、ハリーから聞いたわ。 今年あった色々なことを。 ……貴女がずっとセドリックを手助けしていたことも。 でも私は、」 「グレンジャーさん。 用件はそれだけですか? ならすぐにここから出て行ってもらっていいでしょうか。 私はこれ以上貴女の話を聞くつもりはないので」 その覚悟は……ここに入ってきた時同様、ダリアによっていきなり遮られてしまったのだった。 セドリックの名前を口にした瞬間、ダリアが無表情で私の方を見つめる。 そこには明確な拒絶な意志だけがあり……以前まで私に見せてくれていた不器用でも暖かいものはどこにもありはしなかった。 思えばもう全てが遅かったのだと思う。 私はやはり甘かったのだと思う。 何も変わらない。 たとえ『例のあの人』が復活しても、決して優しいダリアが変わるわけではない。 あの人がダリアのことを知っていても……それこそ死喰い人にしようとしていたとしても関係ない。 彼女は彼女。 誰よりも優しく、そして決して敵にはならない子なのだと。 そう私は無意識に思っていたのだ。 だから私は……どうしようもない愚か者だった。 考えてみれば変わらないはずがなかった。 彼女自身が変わらなくとも、決して彼女の周りの状況は……彼女をただの優しい女の子であることを許してくれないのだ。 彼女の愛する父親が敵側にいるということは、すなわち彼女も敵側にいなければ、その父親の立場や命も危うくなることなのだから。 それは決して彼女と私が友人であっても……私達の道がもう 絶 ・ 対 ・ に ・ 交 ・ わ ・ ら ・ な ・ い ・ こ ・ と ・ を意味しているのだから。 ダリア視点 「……ダリア、本当に良かったの?」 「……もうこれしか道はないのです。 それに彼女にとってもこっちの方がいいのです。 寧ろ今までおかしかったのです。 私と付き合いがあれば……彼女も危険な立場になってしまうから。 だからこれでいいのです。 ……これしかないのです」 ホグワーツ特急がロンドンに到着し、汽車の中にいた生徒達も今はプラットホーム内で家族との再会に喜びの声を上げている。 そんな中私とダフネは、遠くからこちらに何かもの言いたげな視線を送るグレンジャーさんの存在を感じながら話し込んでいた。 ダフネと違い、私は決して振り返らない。 彼女に決して残酷な希望を持たせないために。 ……私が決して、余計な希望を持たないために。 グレンジャーさんが私を慰めようとコンパートメントに来てくれたことは分かっている。 彼女のあの様子だと、ポッターから全てを聞いたのだろう。 それこそ私が今年何をしていたかを含めて。 それでも彼女は私の所に変わらぬ態度で来てくれた。 それは彼女もまたダフネと同じように、 『ダリア……貴女は決してセドリック・ディゴリーを殺したわけじゃない。 貴女のせいなんかではないよ』 そう言ってくれようとしたのだろう。 グレンジャーさんもまた、ダフネと変わらぬ優しさを持っているから。 でもだからこそ……もう私は彼女と共にいるわけにはいかない。 闇の帝王が復活したから。 私はもう……今までのように平穏な日常を生きることを許されないから。 だから私は決して振り返らない。 グレンジャーさんが私を慰めてくれようとした瞬間、 『私はこれ以上貴女の話を聞くつもりはないので』 そう言って無理やり部屋から追い出した。 彼女と決別するために。 それを悲しそうな視線を送っているからというだけで彼女の方に振り返れば、先程の行動の全てが無意味なものになってしまう。 それにあくまで彼女は、 「……でも、ダリア。 私は彼女とこれからも話し続けるよ。 だって彼女は私の友達でもあるもの」 「……えぇ、彼女は 貴 ・ 女 ・ の ・ 友人ですから」 私の友人ではなく、ダフネの友人でしかないのだから。 寧ろこれまでがどうかしていたのだ。 彼女にはドビーと再会させてもらった恩がある。 でもそれだけだ。 彼女と永続的に付き合い、彼女に 危 ・ 険 ・ を及ぼしていい理由にはならない。 だから……これでいいのだ。 私は内心で湧き上がる寂しさを抑え込みながら、何とか苦心してダフネに別れの挨拶をする。 「では、ダフネ。 また……手紙は書きます」 「うん……今年も私は毎日書くよ。 だからダリア……」 「そんなに悲しそうな表情をしないで下さい。 ……貴女 達 ・ は私が絶対に守りますから」 そして今までで一番暗い雰囲気の別れを済ませた後、私は後ろで黙って待っていてくださったお兄様の下に向かう。 背中にダフネと……そしてグレンジャーさんの悲し気な視線を感じながら。 お兄様はそんな私を迎えると、そっと一言だけ尋ねてくる。 「ダリア。 ……大丈夫か?」 「えぇ、大丈夫です」 「ふん。 そうであればどれだけいいことか。 そんな表情をして大丈夫なはずがないだろう。 ……だからダフネとも 約 ・ 束 ・ し ・ た ・ 通 ・ り ・ 、これからはきちんと話すんだ。 僕だってお前を支えてやれる。 ……僕の言いたいことはそれだけだ」 しかしどうやら最初から私の返答など聞いていなかったらしく、私の返事に取り合うことなく歩き始めたのだった。 私はどこか釈然としない気持ちで、汽車の窓ガラスに反射するいつも通りの無表情を眺めた後、前を進むお兄様に続いて歩き始める。 そんな中ふと、去年も同じようなやり取りをお兄様としたことを思い出した。 もっとも去年と今年では全てが逆なのだが……。 だがそんな益体のないことを考えていても、時間という物は問答無用に進み続けていく。 ホームを歩いていると、これまた去年と同じく、いや、 去 ・ 年 ・ 以 ・ 上 ・ に ・ 上 ・ 機 ・ 嫌 ・ なお父様が私達を迎えて下さる。 ……お母様の姿はホームのどこにも存在しなかった。 しかもお父様は開口一番、 「ダリア、ドラコ。 良く戻って来たな。 だが帰ってすぐで悪いが、ダリア。 お前にはすぐに会ってもらわねばならんお方がいる。 シシーには あ ・ の ・ お ・ 方 ・ のお世話をしてもらっているのだ。 ダリアなら大丈夫だと思うが、決して失礼のないように。 ……あのお方こそ、我らマルフォイ家に栄光をもたらして下さるのだから」 そんな不吉な言葉を添えていたのだ。 あのお方。 名前こそ明言されてはいないが、このタイミングでお父様がここまで丁寧な対応をする相手など一人しかいない。 つまり私は……これから あ ・ い ・ つ ・ に会うことになるのだ。 いよいよこの時が来てしまったかと思う私の手を、お父様はやはり上機嫌に握った後『姿現し』をする。 果たしてそこは私の愛してやまないマルフォイ家だった。 無能な魔法省のせいで奴はまだ世間では死んだことになっている。 それを奴は最大限利用するため、こうしてどこかに隠れ潜みながらお父様を含む『死喰い人』に指示を出しているのだろう。 そしてその栄えある隠れ家にマルフォイ家の屋敷を選んだと……。 いよいよ気分が沈んでいくようだった。 「ドラコ、お前は自分の部屋に戻りなさい。 お前にはまだ早い。 だが……ダリア、さぁ、お前はこっちだ。 あのお方は首を長くしてお前をお待ちだ」 しかし……私の運命は、相変わらず否が応でも決められた方に進んでいく。 不安そうなお兄様を置き去りにし、私はお父様の書斎に連行される。 そしてそこにこそ、 「あぁ……ダリア・マルフォイ……で合っているな? 無論お前ならば俺様が何者であるか分かっているな?」 私を人殺しの道具として創り出し、今なお私の運命を縛り付ける……闇の帝王がいたのだった。 今年も色々なことがあった。 その中でも一番印象に残ったのは……おそらく別れだったように思う。 寧ろ一年間色々あったというのに、もう私の中には別れしか残ってはいない。 セドリックとの別れ。 あのムーディに化け続けていた男との別れ。 グレンジャーさんとの別れ。 そして……今まで大切にしてきた、私の愛する日常との別れ。 別れたものは……失ったものは二度とは戻らない。 どんなに望んでも、どんなに嘆いたとしても。 私 ・ が ・ 壊 ・ し ・ て ・ し ・ ま ・ っ ・ た ・ も ・ の ・ は ・ ……もう二度とは戻らない。 だから私は告げる。 セドリックの遺言を聞いた時と同じように、 「初めまして、我が主。 私の…… 創造主 マスター。 私は貴方の忠実な僕。 何なりとご命令を」 私は今までの日常に、そっとそんな 別 ・ れ ・ の言葉を告げるのだった。

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