鬼 滅 の 刃 ss ぎ ゆ し の。 【鬼滅の刃SS】鮭大根【ぎゆしの】

鬼滅の刃~蒸の呼吸~【完結】

鬼 滅 の 刃 ss ぎ ゆ し の

「冨岡さん、月が綺麗ですね」 その言葉に、義勇は空を見上げる。 なるほど確かに、雲一つ無く、月と星がよく見える。 「……………そうだな」 「…ふふ、」 「何だ、胡蝶」 たっぷりの間を空けて、そう返すとクスクスという笑い声。 笑う胡蝶の方を向いて、義勇は首を傾げた。 なんでもありませんよ、とやはり笑いながらそう溢すのだ。 「…何でもないなら、別に構わないが」 「……」 そう言って、いつもの無表情を崩さずにまた歩き出す。 「…そういうところですよ、冨岡さん」 背後を歩く胡蝶が、そう呟いたことを義勇は知らない。 禰豆子が、人を襲った際に俺は腹を切る。 当然だ。 責任を取らなければいけないから。 でもだからといって、鱗滝さんと冨岡さんまで腹を切るなんて。 冨岡さんだって不服に違いない。 そう思ったのに、どうして。 動揺する様子もなかった。 まるで当然と言わんばかりに無表情で。 文句の一つも言わなかった。 気付いたら涙だけが、流れていて、止まらなくなっていた。 嗚呼、きっとあのときから。 俺はあなたに、惹かれていたんだ。 雲一つ無い、晴天の日。 頬を叩く渇いた音と「地毛なのに!!」という善逸の悲鳴が響いた。 「うぅ…」 「お前…またやられてんのか」 「あ、兄貴……ほっといてよ」 殴られて意気消沈していた善逸に声をかけたのは、彼と同じ家に住む、獪岳だった。 善逸は親しみの意を込めて ? 兄貴と呼んではいる。 決して血は繋がっていないし、仲が良いわけではないのだが。 「殴られてんのか。 ザマァ」 「うるせぇよ、クズ。 いいんだよ、俺の至福の時間を邪魔すんな」 「至福ね。 女好きもほどほどにしろよ、カス……また殴られんぞ」 「あぁ、それなんだけど。 …なんかさぁ、……気持ちよく?…なって来ちゃって」 「……は?」 恍惚、といってもいいような表情を浮かべた善逸と、ドン引きして固まる獪岳。 今日は平日で、ここは校門の前である。 二人は揃って遅刻して、冨岡先生に怒られることになる。 「……髪を縛って欲しいのか」 「むー!」 「……わかった」 義勇は禰豆子を膝の上に乗せ、髪を梳く。 ……そう言えば、縛るモノを、持っていない 仕方ない。 義勇は自分の髪紐をほどき、それを使って禰豆子の髪を縛る。 「……出来たぞ」 「ム!」 「満足なら、……良かった」 「…ムーム!ムー!」 縛って貰えてご機嫌な禰豆子だったが、義勇を見て急に怒りだした。 義勇が、髪を下ろしてしまったからである。 禰豆子はお揃いにしたかったのに、義勇がこれではお揃いではなくなってしまう。 「……?」 「むー!」 禰豆子の言いたいことがわからない義勇は、じたばたと暴れる禰豆子を不思議そうに見て、首を傾げる。 この光景は、炭治郎が戻ってくるまで続いた。 青い瞳に惹かれた。 一目見て、欲しい、傍に置いておきたいと思った。 確か、現役の水柱だった筈だ。 柱であれば、少し遊んでもすぐには壊れはしないだろう。 あぁ、あれを手に入れたらどうしようか。 鬼として一生の忠誠を誓わせるのも良いが、人のまま飼うのも有りかもしれない。 …まぁ、いずれ鬼にはするのだが。 「必ず手に入れてみせる」 そう呟いた男は愉しそうに嗤った。 「うん。 やっぱり綺麗だ。 流石猗窩座殿!鬼狩りの中から連れてきたって言うから心配でさぁ、ほら柱だっていうし」 俺は猗窩座殿の友達だから。 …ペラペラとよく喋る。 そう言えば、昔、この男とは違うタイプだったが、よく喋る奴が…かなり、いた気がする。 誰だったっけ? それに…鬼狩り、柱。 何のことだ。 頭にもやがかかって思い出せない。 「綺麗だなぁ。 うん、凄く綺麗だ」 「……」 「喋るのは嫌いかい?それとも喋れない?…返事が無いのは悲しいなぁ」 「……喋る、のは…苦手…だ」 「そっか!鬼になったばかりだものね!うんうん、しょうがないよねぇ」 「俺は上弦の弐で童磨っていうんだけど、君の名前を聞いてもいいかい?」 「…俺は、」 その時、ゴシャッという音がして童磨の頭の、上半分が吹き飛んだ。 血が飛び散る。 「童磨…貴様、義勇に寄るな」 「………」 「……やれやれ。 猗窩座殿、挨拶もなしに急に暴力を振るうのはよくないよ、ねぇ義勇くん」 「黙れ」 殺気立って童磨を睨み付ける猗窩座が居た。 俺をここに連れてきた張本人。 どうやら童磨の頭を吹き飛ばしたのは猗窩座だったらしい。 童磨は酷いなぁ、と言いつつ「これ以上は猗窩座殿が怖いから」と去っていってしまった。 「………あ、猗窩座」 「すまなかった。 あの阿呆に何もされなかったか」 「…されてない」 「ならいい」 「……猗窩座、鬼狩りって」 「……そう言えば、覚えていないんだったな。 気にするな、どうせ今のお前には関係ない」 「関係ないのか」 「あぁ、…いつか教えてやる。 それより疲れているだろう、」 今は眠れ。 その声に義勇はゆっくりと目を閉じた。 ある薬品のせい、ということなのだが、話せば長くなるので、ということでその辺りの説明を義勇はされていなかった。 言ってしまえば幼少期の頃に体だけ戻ってしまった、ということだった。 本人に聞く限り、記憶はあるらしい。 「…高いね。 こういうことは、あまりなかったものでね。 憧れていたんだ」 「…そうですか」 「ふふ、義勇の手は大きいねぇ」 耀哉の、本当の幼子のようにくすくすと笑う姿は義勇にとって初めて見るものであり、愛らしかった。 …とても嬉しい」 いつもの柔らかで何処か底知れない笑みではなく、無邪気で子どもらしい笑みだった。 「…子供の頃に戻ったからね。 義勇の顔がよく見えるよ」 やっぱり、美しいね。 耀哉は義勇の頬を撫でる。 そっと、唇を重ねた。 「おっ、……かがや、さま…」 「……義勇」 「っやはり、あまね様を…」 「義勇」 耀哉は二度、義勇の名を呼んだ。 一つは愛おしくてたまらないと言うような声音で。 もう一つは、駄々をこねる幼い子どもに言い聞かせるように。 「もう少し、二人きりはだめかい?」 小さくなられても、お館様はお館様。 それを思い知らされることになった日だった。 【肆】お揃いの髪型にしたかった禰豆子と禰豆子の意図がわからない義勇さん 【伍】義勇さんに一目惚れしちゃった無惨さま 【陸】鬼化義勇さんの猗窩義とそれに絡む童磨さん 【漆】訳あって小さくなった 記憶有り のお館様と義勇さんの産義 耀義? って感じです 笑 御閲覧有り難うございました!.

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#鬼滅の刃 #冨岡義勇 鬼滅の刃SS詰め

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「冨岡さん、月が綺麗ですね」 その言葉に、義勇は空を見上げる。 なるほど確かに、雲一つ無く、月と星がよく見える。 「……………そうだな」 「…ふふ、」 「何だ、胡蝶」 たっぷりの間を空けて、そう返すとクスクスという笑い声。 笑う胡蝶の方を向いて、義勇は首を傾げた。 なんでもありませんよ、とやはり笑いながらそう溢すのだ。 「…何でもないなら、別に構わないが」 「……」 そう言って、いつもの無表情を崩さずにまた歩き出す。 「…そういうところですよ、冨岡さん」 背後を歩く胡蝶が、そう呟いたことを義勇は知らない。 禰豆子が、人を襲った際に俺は腹を切る。 当然だ。 責任を取らなければいけないから。 でもだからといって、鱗滝さんと冨岡さんまで腹を切るなんて。 冨岡さんだって不服に違いない。 そう思ったのに、どうして。 動揺する様子もなかった。 まるで当然と言わんばかりに無表情で。 文句の一つも言わなかった。 気付いたら涙だけが、流れていて、止まらなくなっていた。 嗚呼、きっとあのときから。 俺はあなたに、惹かれていたんだ。 雲一つ無い、晴天の日。 頬を叩く渇いた音と「地毛なのに!!」という善逸の悲鳴が響いた。 「うぅ…」 「お前…またやられてんのか」 「あ、兄貴……ほっといてよ」 殴られて意気消沈していた善逸に声をかけたのは、彼と同じ家に住む、獪岳だった。 善逸は親しみの意を込めて ? 兄貴と呼んではいる。 決して血は繋がっていないし、仲が良いわけではないのだが。 「殴られてんのか。 ザマァ」 「うるせぇよ、クズ。 いいんだよ、俺の至福の時間を邪魔すんな」 「至福ね。 女好きもほどほどにしろよ、カス……また殴られんぞ」 「あぁ、それなんだけど。 …なんかさぁ、……気持ちよく?…なって来ちゃって」 「……は?」 恍惚、といってもいいような表情を浮かべた善逸と、ドン引きして固まる獪岳。 今日は平日で、ここは校門の前である。 二人は揃って遅刻して、冨岡先生に怒られることになる。 「……髪を縛って欲しいのか」 「むー!」 「……わかった」 義勇は禰豆子を膝の上に乗せ、髪を梳く。 ……そう言えば、縛るモノを、持っていない 仕方ない。 義勇は自分の髪紐をほどき、それを使って禰豆子の髪を縛る。 「……出来たぞ」 「ム!」 「満足なら、……良かった」 「…ムーム!ムー!」 縛って貰えてご機嫌な禰豆子だったが、義勇を見て急に怒りだした。 義勇が、髪を下ろしてしまったからである。 禰豆子はお揃いにしたかったのに、義勇がこれではお揃いではなくなってしまう。 「……?」 「むー!」 禰豆子の言いたいことがわからない義勇は、じたばたと暴れる禰豆子を不思議そうに見て、首を傾げる。 この光景は、炭治郎が戻ってくるまで続いた。 青い瞳に惹かれた。 一目見て、欲しい、傍に置いておきたいと思った。 確か、現役の水柱だった筈だ。 柱であれば、少し遊んでもすぐには壊れはしないだろう。 あぁ、あれを手に入れたらどうしようか。 鬼として一生の忠誠を誓わせるのも良いが、人のまま飼うのも有りかもしれない。 …まぁ、いずれ鬼にはするのだが。 「必ず手に入れてみせる」 そう呟いた男は愉しそうに嗤った。 「うん。 やっぱり綺麗だ。 流石猗窩座殿!鬼狩りの中から連れてきたって言うから心配でさぁ、ほら柱だっていうし」 俺は猗窩座殿の友達だから。 …ペラペラとよく喋る。 そう言えば、昔、この男とは違うタイプだったが、よく喋る奴が…かなり、いた気がする。 誰だったっけ? それに…鬼狩り、柱。 何のことだ。 頭にもやがかかって思い出せない。 「綺麗だなぁ。 うん、凄く綺麗だ」 「……」 「喋るのは嫌いかい?それとも喋れない?…返事が無いのは悲しいなぁ」 「……喋る、のは…苦手…だ」 「そっか!鬼になったばかりだものね!うんうん、しょうがないよねぇ」 「俺は上弦の弐で童磨っていうんだけど、君の名前を聞いてもいいかい?」 「…俺は、」 その時、ゴシャッという音がして童磨の頭の、上半分が吹き飛んだ。 血が飛び散る。 「童磨…貴様、義勇に寄るな」 「………」 「……やれやれ。 猗窩座殿、挨拶もなしに急に暴力を振るうのはよくないよ、ねぇ義勇くん」 「黙れ」 殺気立って童磨を睨み付ける猗窩座が居た。 俺をここに連れてきた張本人。 どうやら童磨の頭を吹き飛ばしたのは猗窩座だったらしい。 童磨は酷いなぁ、と言いつつ「これ以上は猗窩座殿が怖いから」と去っていってしまった。 「………あ、猗窩座」 「すまなかった。 あの阿呆に何もされなかったか」 「…されてない」 「ならいい」 「……猗窩座、鬼狩りって」 「……そう言えば、覚えていないんだったな。 気にするな、どうせ今のお前には関係ない」 「関係ないのか」 「あぁ、…いつか教えてやる。 それより疲れているだろう、」 今は眠れ。 その声に義勇はゆっくりと目を閉じた。 ある薬品のせい、ということなのだが、話せば長くなるので、ということでその辺りの説明を義勇はされていなかった。 言ってしまえば幼少期の頃に体だけ戻ってしまった、ということだった。 本人に聞く限り、記憶はあるらしい。 「…高いね。 こういうことは、あまりなかったものでね。 憧れていたんだ」 「…そうですか」 「ふふ、義勇の手は大きいねぇ」 耀哉の、本当の幼子のようにくすくすと笑う姿は義勇にとって初めて見るものであり、愛らしかった。 …とても嬉しい」 いつもの柔らかで何処か底知れない笑みではなく、無邪気で子どもらしい笑みだった。 「…子供の頃に戻ったからね。 義勇の顔がよく見えるよ」 やっぱり、美しいね。 耀哉は義勇の頬を撫でる。 そっと、唇を重ねた。 「おっ、……かがや、さま…」 「……義勇」 「っやはり、あまね様を…」 「義勇」 耀哉は二度、義勇の名を呼んだ。 一つは愛おしくてたまらないと言うような声音で。 もう一つは、駄々をこねる幼い子どもに言い聞かせるように。 「もう少し、二人きりはだめかい?」 小さくなられても、お館様はお館様。 それを思い知らされることになった日だった。 【肆】お揃いの髪型にしたかった禰豆子と禰豆子の意図がわからない義勇さん 【伍】義勇さんに一目惚れしちゃった無惨さま 【陸】鬼化義勇さんの猗窩義とそれに絡む童磨さん 【漆】訳あって小さくなった 記憶有り のお館様と義勇さんの産義 耀義? って感じです 笑 御閲覧有り難うございました!.

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鬼滅の刃~蒸の呼吸~【完結】

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というのも、二人とも目指す場所は蝶屋敷なのである。 炭治郎は同期である善逸と伊之助がまだ治療を受けているのでお見舞いに。 義勇の方は傷薬の軟膏が無くなったので補充をするために蝶屋敷に向かっていた。 話題としてはよくある部類だろう。 義勇の方は口下手なので、こうして自分から話しかけてくれる炭治郎のような存在はありがたかった。 なぜ鮭大根が好きだと言ったら蝶屋敷で夕飯を食べることになるのだろう。 義勇がそう思案していると、それを察したのか炭治郎が更に続ける。 これには弟弟子で義勇と比較的長い時間関わってきたと思っていた炭治郎でも見たことのない姿だった。 と続けられると義勇はバツの悪そうな表情を浮かべる。 これで弟弟子の前では気取っていたかったのだろう。 無口で口下手と言われる義勇だが、気を許した相手には意外と表情は雄弁なのだ。 何かきっかけがあったんですか」 「…姉の得意料理だった」 聞いてから炭治郎は『しまった』と思った。 義勇の姉は祝言をあげる前日に義勇のことを庇って亡くなっている。 辛い記憶を思い出させてしまったかもしれない。 「鮭大根は姉さんの得意料理だった…俺は姉が好きだったから…好きな人が作ってくれる料理ほど旨いものはない」 「たしかに…」 決して上手い言い回しではなかったが、義勇の想いは伝わってくる。 好きな人が作ってくれる料理に勝るものはない。 炭治郎は幼い頃に作ってもらった母の手料理を思い出し、納得していた。 この屋敷に常駐し、家事や治療を取り仕切っている神崎アオイが挨拶を述べる。 人当たりの良い炭治郎と人付き合いの苦手な義勇では致し方ないことだ。 「今日の夕飯は義勇さんもご一緒しても構わないでしょうか?義勇さんは鮭大根が大好物だそうで…」 義勇に代わって炭治郎が聞く。 そのつもりだと思いますし…」 少し不思議そうな顔をしてアオイが応える。 「…ありがとう」 言葉少なに礼を言うと、『胡蝶に会いに行く』と炭治郎に言い残し、義勇はスタスタと歩いていってしまった。 よっぽど楽しみなのだろう。 傷薬の軟膏も柱である義勇が使うことは少ない。 大概はその場に居合わせた平隊員の治療に使ってしまう。 自分で使っているわけではないからか、無くなって初めて気がつくのだ。 今回もたまたま居合わせた炭治郎の傷に塗ろうと取り出すと残りが僅かなことに気がついたのだ。 そこから鴉を飛ばして時間にして一時間程。 その速さでもう一人分の夕食を追加するとは、炭治郎はアオイの手際の良さに驚愕していた。 『え?はい…構いませんよ。 そのつもりだと思いますし…』 『いえ、水柱様の分は元々作られていましたよ』 そう、どこか他人事なのだ。 蝶屋敷の主人は他の誰でもない蟲柱、胡蝶しのぶである。 傷を負った隊士の治療や機能回復訓練の責任者も主人であるしのぶである。 しかし、患者の衣類の洗濯、生薬の買い付け、そして蝶屋敷での食べ物の調理は柱として任務に赴くしのぶのかわりにアオイが請け負っている。 それなのに、どうしてこんなに他人事なのだろう。 「ん?あぁ、ただいまカナヲ!」 「炭治郎…あれ?水柱様と一緒じゃないの?」 「あぁ…義勇さんなら、先に…ってどうして義勇さんがいるって思ったんだ?」 「だって、今日は夕飯が鮭大根だから」 「ん?」 ますますわけがわからない。 どうして今夜の夕飯が鮭大根なら義勇がいることになるのだろうか。 いくら好物だとはいえ、好物の前に常に移動する人間などいないだろう。 にわかには信じがたい。 「アオイさんが鮭大根を作るのを義勇さんが察知してるんですかね?」 「ん?鮭大根を作っているのは私ではありませんよ?」 「え?」 予想外の答えだったが、これで納得はできる。 どこか他人事だったのではない。 作っていないのだから本当に他人事だったのだ。 しかし、それでは一体誰が作っているのだろう。 しのぶはそれに加えて治療や毒の調合も行なっている。 料理など勉強する暇などない。 作れる料理が一つだけでも別段不思議はない。 決して作りやすい料理ではない。 その上有名なわけでもない。 そんな料理だけが、どうして作れるのだろうか。 この分だと二人ともだいぶよくなっているようだ。 随分長い間話をしていたようだ。 三人は夕飯を食べる前に風呂に向かうことにした。 炭治郎は最初、まだ脚の怪我が治っていない善逸を助けて一緒に行こうとしたが。 善逸の方から 「俺はいいからアイツを止めてやってくれ。 またしのぶさんに怒られちゃうよ…」 と言われたので伊之助を追いかけて来たのだ。 しのぶの方は食べ終わっていたが、義勇の方はまだ鮭大根を残していた。 「おい、半々羽織!それいらねえのかよ?」 それとは鮭大根のことである。 伊之助は丁寧に鮭大根だけを残している義勇を見て食べたくないと判断したのだ。 「…好きな人が作ってくれるからだ」 ドキンと心臓が跳ねた音がする。 同じ台詞のはずなのに、この鮭大根を誰が作っているかどうかを聞く前と後では意味合いがまるで違うように聞こえる。 そしてそれ以上にこれまでの違和感が全て繋がった。 どうしてしのぶは鮭大根という珍しい料理だけを作るのか。 どうして義勇がやってくる日は毎回鮭大根なのか。 やってくる日がわかるのはきっと、薬を出している人と料理を作る人が同じだからだろう。 いつも大体どれくらいで使い切るのかわかるのだ。 二人とも大切な人を失った。 鬼を殲滅することが何よりも優先すべきことなのだ。 きっとこれからもしのぶは鮭大根を出し続け、義勇はそれを食べながらしのぶの話を聞く。 それだけで満足なのだろう。 炭治郎はそう願わずにはいられなかった。 それほど二人の間からは、嗅いだことのないような幸せな匂いが漂っていた。 76Ks8xqyaH0 すごくほわほわする.

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